古代エジプトの記念碑が由来だというオベリスク。
スペイン語ではオベリスコで、ブエノスアイレスにもある。
高さは67.5メートルと有名なワシントンのものより100メートル以上も低いが、
ともに目抜き通りであるヌエベ・デ・フリオとコリエンテスの交差点中央にそびえ立ち、
揺るぎない街のシンボルとなっている。
ここには、何かがあると人が集まる。
ボカが優勝すればボカサポーターが、
リーベルがタイトルを獲得すればリーベルサポーターが集い、喜びを分かち合う。
昨年のW杯決勝後には、敗れたものの群衆が詰めかけ、一部が暴徒化した。
そのオベリスコが、最近少し様子がおかしい。
写真1はいつものオベリスコで、写真2が最近のもの。
どこが違うかおわかりだろうか。
そう、様子がおかしいといった最近のものは、てっぺんの四角錐がないのだ。
そして、数キロメートル離れた場所に頭の部分だけが置かれている。
これは一体、どうしたことか。
種明かしをすると、これは一種の芸術活動。
MALBA(ブエノスアイレス・ラテンアメリカ博物館)という組織が中心となり、
市当局の協力も得たうえで、オベリスコの側面をパネルで延長し、てっぺん部分を囲って見えなくしたのだ。
上部に見える照明の黒いラインから上がパネルで、その重量は3トンにもなるとか。
1年がかりのプロジェクトだという。
頭の四角錐が置かれているのはMALBAの玄関前。
これはもちろんコピーだ。
てっぺんを隠すだけではなく、「なくなった頭はここにありますよ」と洒落っ気を出している。
内部には無料で入ることができ、人々の興味を惹くのは4面に設置された窓。
この窓が液晶画面となっており、実際にオベリスコの上部から撮影された4Kの高画質映像が流されている。
窓枠に鳩が止まっていたりして、本当にてっぺんへ上ったような気になれる。
オベリスコは過去に、世界エイズ撲滅デーに合わせてピンクのコンドームを被せられたこともあるという。
ブエノスアイレスのシンボルに、ずいぶんと大胆なことをするものだ。
これが、国民性というものなのか。
たとえ物理的に可能だとしても、日本では、スカイツリーにコンドームは着けないだろう。