古代エジプトの記念碑が由来だというオベリスク。
 
スペイン語ではオベリスコで、ブエノスアイレスにもある。
 
高さは67.5メートルと有名なワシントンのものより100メートル以上も低いが、
 
ともに目抜き通りであるヌエベ・デ・フリオとコリエンテスの交差点中央にそびえ立ち、
 
揺るぎない街のシンボルとなっている。
 
 
 
ここには、何かがあると人が集まる。
 
ボカが優勝すればボカサポーターが、
 
リーベルがタイトルを獲得すればリーベルサポーターが集い、喜びを分かち合う。
 
昨年のW杯決勝後には、敗れたものの群衆が詰めかけ、一部が暴徒化した。
 
 
 
そのオベリスコが、最近少し様子がおかしい。
 
写真1はいつものオベリスコで、写真2が最近のもの。
 
151002_1

151002_2
 
 
 
どこが違うかおわかりだろうか。
 
そう、様子がおかしいといった最近のものは、てっぺんの四角錐がないのだ。
 
そして、数キロメートル離れた場所に頭の部分だけが置かれている。
 
これは一体、どうしたことか。
 
 
 
151002_3
 
種明かしをすると、これは一種の芸術活動。
 
MALBA(ブエノスアイレス・ラテンアメリカ博物館)という組織が中心となり、
 
市当局の協力も得たうえで、オベリスコの側面をパネルで延長し、てっぺん部分を囲って見えなくしたのだ。
 
上部に見える照明の黒いラインから上がパネルで、その重量は3トンにもなるとか。
 
1年がかりのプロジェクトだという。
 
 
 
頭の四角錐が置かれているのはMALBAの玄関前。
 
これはもちろんコピーだ。
 
てっぺんを隠すだけではなく、「なくなった頭はここにありますよ」と洒落っ気を出している。
 
内部には無料で入ることができ、人々の興味を惹くのは4面に設置された窓。
 
この窓が液晶画面となっており、実際にオベリスコの上部から撮影された4Kの高画質映像が流されている。
 
窓枠に鳩が止まっていたりして、本当にてっぺんへ上ったような気になれる。
 
 
 
151002_4
 
オベリスコは過去に、世界エイズ撲滅デーに合わせてピンクのコンドームを被せられたこともあるという。
 
ブエノスアイレスのシンボルに、ずいぶんと大胆なことをするものだ。
 
これが、国民性というものなのか。
 
たとえ物理的に可能だとしても、日本では、スカイツリーにコンドームは着けないだろう。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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