11月1日にリーグ優勝を果たしたボカは、3日後にはコパ・アルヘンティーナの決勝戦を2-0で制して二冠を達成した。
 
この大会は1969年と70年に行われ、その後途絶えていたが2011年から復活したもの。
 
復活直後は格下の大会と見なされていたが、昨年あたりからクラブもファンもその価値を認めるようになってきた。
 
 
 
大会は下部リーグのクラブも参加するトーナメントで、試合はホーム&アウェイでなく地方会場での一発勝負。
 
決勝戦にはボカとロサリオ・セントラルが進出し、コルドバのスタジアムで激突した。
 
R・セントラルは今季好調で、リーグ戦でも優勝争いに加わっていた。
 
それだけに、リーグ戦をボカに獲られたとなれば、カップ戦は絶対に譲れないところ。
 
しかし、その夢は誤審によって打ち砕かれてしまった。
 
 
 
ボカの先制点はPKによるものだったが、これがミスジャッジ。
 
たしかにボカ選手が足を引っかけられてペナルティエリア内で倒れたが、反則が起きたのはエリアの外だった。
 
 
 
さらにR・セントラルがゴールを決めると、オフサイドの判定で認められず。
 
たしかにオフサイドポジションに選手はいたが、ゴールを決めたのは別の選手だった。
 
そしてボカの2点目はオフサイドなのにそれを取らなかった。
 
 
 
R・セントラルの幻のゴールは、オフサイドポジションにいた選手もクロスに合わせてジャンプしており、
 
しかもその位置がシュートを決めた選手と重なっていた。
 
映像で見ても、どちらがヘディングしたかわからないようだった。
 
このケースは、たとえボールに触っていなくとも、オフサイドポジションの選手が積極的にプレーしたということで、
 
オフサイドとするのは正しい。
 
しかし他の2点は明らかな誤審なので、R・セントラル側とすれば、これもボカ有利の判定と考えてしまう。
 
これが認められていれば1-1だったのだから。
 
 
 
主審はPKの誤審を認め、協会は彼にペナルティを与えると発表。
 
しかし勝敗が覆らないので、R・セントラルファンは怒りが収まらない。
 
彼らは、審判団は協会にコントロースされていた、あるいはボカから買収されていた、と信じ込んだ。
 
 
 
そしてそれから4日後の11月8日には、リーグ最終節のR・セントラル対ボカが行われた。
 
スタジアムは憎悪の空気で埋め尽くされ、ボカのアルアバレーナ監督に向けて、
 
スタンドから唾が吐きかけられ、小便のような液体まで飛んできた。
 
 
 
前半10分には、ピッチ内に侵入した男がアルアバレーナに突進し、オレンジ色の布のようなものを投げつけた。
 
これは、先の決勝戦で審判団が来ていたオレンジの審判服。
 
相手にケガをさせる心配はないし恨みの理由がはっきりわかるので、投げるものとしてはなかなか気が利いている。
 
 
 
これでスタジアムは騒然となったが、R・セントラルのコウデ監督がグランドの中央へ出て、
 
四方のスタンドに向かって「冷静になってくれ」とゼスチャーで懇願。
 
そのまま試合は続行され、今回はR・セントラルが3-1で勝ち、消化試合だったとはいえ借りを返した。


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ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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