日本でも高齢者ドライバーの高速道路逆走や、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故が多発している。
したがって高齢者の免許更新は、更新期間を短くしたり、特別な講習や適性テストを行っていると聞く。
しかし通常は、更新が拒否されることはないはずだ。
 
 
70歳を超えるホルヘの知人が、先日、免許の更新に行ってきた。
彼は子供のころアルゼンチンに移民した一世で、昔の日本人気質をもつ真面目な人物。
試験場で更新の手続きをはじめようとすると、係員が、「最近何か、健康面で問題はありませんか」と訊いてきた。
高齢者には、このような質問がされるのだという。そこで、「何もない」いえば、次のステップへ進む。
 
 
たとえ何かあっても、普通の人は「ない」と答えるのだが、日頃から「ごまかすのは嫌いだ」といっている彼は、正直に答えた。
昨年、不整脈が見つかり、ペースメーカーのような器具を入れたのだ。
不整脈が起こると、作動するものだという。
しかし日常生活は以前とまったく変わらず、元気にゴルフもやっている。
 
 
その答えを聞いた係員は、「では、診断書をもってきてください」と告げ、それが提出されるまで手続きはお預けとなった。
診断書は心臓関係だけでなく、聴覚や認知症関係の4通も必要だという。
更新期限がギリギリだったので、慌てて病院を巡って4通を入手した。
それを提出すると、試験場の医師がそれを読み、「あなたは更新できません」と拒否されてしまった。
 
 
診断書を頼んだ医師たちには、免許更新のためと理由を説明し、不利になる記述は一切なかった。それなのに、更新できないというのだ。
ペースメーカーを入れたからダメというのなら、はじめから診断書を提出せよなどといわなければいい。
とにかく、ホルヘの知人は免許の更新ができなかった。
ごまかすのは嫌だからと、真面目に答えたのが裏目に出た。
 
 
アルゼンチンは、健康に関しては日本より規則が厳しい。
今年の4月頃から、マラソン大会に参加するランナーにも健康診断書の提出が義務付けられた。
5キロメートル以上の大会は、診断書がなければ申し込みができなくなった。
この規則のせいで、参加する市民ランナーは激減するのではないだろうか。
 
 
また数年前から、レストランでテーブルに塩を置くのも禁止された。
アルゼンチン人が好きなのはステーキとフライドポテトのセット。
ほとんどの客は、味見もせずに塩をかける。身近にあると、ついかけてしまう。
そこで、塩をテーブルに置かず、客から頼まれたときだけ持って行くように決められた。
毎日のように外食する人には、それなりの減塩効果があるのかもしれない。

※写真はイメージです。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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