私はかれこれ30年近くにわたってサッカーに関する記事やコラムを書くライター業をしていますが、現在はそれと同時に、フリーランス・フォトグラファーである夫ハビエルのアシスタントもしています。
実際のところ、ここ10年くらいの間で夫の仕事の量が増えたため、執筆業よりも夫のアシスタントをしている時間のほうが長いくらいです。
(夫はフリーランスですが8年前からボカ・ジュニオルスのオフィシャルフォトグラファーを務めていて、定期的に単発で代表チームの公式写真なども撮影させてもらっています。)
 
 
アシスタントと言っても現場で撮影の手伝いをするのではなく、サッカーの試合中にどんどん伝送されてくる写真を受信して、サイズ調整やクロップといった編集をしたあと1枚ずつにキャプション(写真の説明)をつけて、夫のフォトエージェントが所有するウェブサイトに即時にアップしていくというデスクワークが基本。
膨大な量のアーカイブの保存と管理も私がやっていて、例えばボカ・ジュニオルスのミュージアムから「今のトップチームに属している選手全員のプレー写真」のリクエストが入ると、適当なカットを探し、全て揃えて送信するのは私の担当なのです。
さて、アルゼンチンリーグの試合を横目で見ながら編集、伝送の作業を速攻で行なうのは、正直なところかなり大変な仕事です。
キャプションには写っている選手の名前も書かなければいけないのですが、たまに背番号が見えず、顔もうつむき加減で一体誰なのかわからないことなどしょっちゅう。
そんな時はチーム写真と照らし合わせて、スパイクの色や入れ墨などで確認したり、どうしてもわからない時は名前ではなく「どこどこの選手」という書き方をしたり。
写真の即時配信が当たり前のようになっている今、余計なところで時間を費やしていられません。
ちなみに1枚の写真につけるキャプションは、被写体の名前の他に対戦チームの名前、大会の名称、年月日、撮影場所(スタジアムの名前と都市名)、撮影したフォトグラファーの名前といった情報となっています。
被写体の名前以外のデータはコピー機能で全部の写真に貼り付けるだけなのですが、「被写体の名前」といっても例えば「ボカ・ジュニオルスのカルロス・テベスがリーベル・プレートのアンドレス・ダレッサンドロとボールを競い合っているところ」とか、「インデペンディエンテのガブリエル・ミリート監督がネストル・ピターナ主審に抗議しているところ」という書き方をするので、結構大変。
これを毎週末、少なくとも4試合分はやっているので、アルゼンチンの1部リーグに属する30チームでプレーしている大半の選手たち、そして監督、審判に至るまで、スペリングも含めてフルネームを自然に暗記してしまいました。
 
 
SNSを駆使したメディアの形体の変化に伴って一刻を争うようになった写真の伝送作業ですが、アルゼンチンではスタジアムによって通信環境が悪いところがあって、夫が使っているモバイル4Gが恐ろしく鈍くなることがあります。
また、同じスタジアムでもコーナーやサイドによって通信スピードが全然違ったり、まるでブラックホールの如く全く通信できないスポットもあったりします。
そこでフォトグラファーたちはそんな「魔のゾーン」をあえて避け、少しでも環境がいいところに陣取るわけなのですが、ゴールを決めた選手が反対側のコーナーに走って行って決めポーズを披露したりすると、いい写真と通信のどちらを優先すべきかというジレンマに悩まされることに。
私もよく、夫がいるコーナーの反対側で祝福の輪ができる様子をテレビを見ながら「あ~通信できない方に走って行っちゃった…」と呟いたあと、得点に喜ぶ選手の「後姿」を「遠くから」おさえた写真が送られてくるのを待つことがあります。
 
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(得点後の祝福シーンを背後から、又は遠くから撮るとこんな感じ)
 
 
もちろん、通信環境の影響がなくても、どのポジションから撮影するかは必ず試合前に決めないといけません。
これが一種の「賭け」となるわけなのですが、得点した選手が夫のいるコーナーに向かって走って行った時は、どんな写真が送られてくるのか楽しみに待つことになります。
映像ではほんの1~2秒で終わってしまうポーズでも、まるで決めポーズのように残すことができるのが写真のいいところですよね。

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(自分が「賭けた」方のコーナーで祝福するとこんな感じ)
 
 
夫がこれまでに撮影した「得点後の喜びシーン」についてはいろんなエピソードがあるので、次回はそれについてお話したいと思います!


About The Author

藤坂ガルシア千鶴

マラドーナとアルゼンチンに憧れ、20歳のときに単身でブエノスアイレスに渡ったが最後、結局そのまま定住。大学在学中からサッカー専門誌にコラムを連載し始め、現在もライター活動を続けている。家族はウルグアイ人フォトグラファーの夫、仕事で中東に在住する長女、そして大学で猛勉強中の次女。映画全般、へヴィメタル、格闘技が大好き。明日はどうなるかわからない国アルゼンチンで、ブルース・リーの名言「水になれ」をモットーに気楽に暮らすアラフィフ世代。

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