ご存知の方も多いと思いますが、先日スカパー!から2017年シーズンのJリーグ中継を放送しない旨のリリースが発表されました。
それに伴って、J SPORTSでも2017年シーズン以降のJリーグ中継は一旦なくなるという形になったようです(特別そういうことを会社から言われた訳ではありませんが・笑)。
僕は2011年の7月からJ SPORTSのJリーグ中継プロデューサーを務めてきました。
それまで8年近く「Foot!」の番組制作に携わっていたので、同じサッカーの仕事とはいえ、まったく畑違いの現場に放り出されることになったんですけど、ハッキリ言って中継という仕事はかなり特殊です。
そもそもテレビ業界自体も、あまり詳細のイメージが湧かないという意見は多々聞く中で、特に中継というジャンルは実際に携わってみないとわからないことだらけだというのは、自分が担当になってみて改めて痛感しました。
1試合を中継するのにどれくらいのお金が掛かるかとか、放送カードはいつ頃決まっていくのかとか、それこそ出演者はどうやって決めていくのかとか(どれも教えませんよ!・笑)、あまりに知らないことが多過ぎて、最初の頃は「へえ」ボタンを押しまくるような日々が続き、色々なことをやらなきゃ、覚えなきゃと意気込んでいたのを記憶しています。
でも、結局はシンプルな結論に落ち着いたんです。
「目の前の試合をそのまま伝えるしかないな」って。
中継って数あるサッカーコンテンツの中でも、最も“ライブ感”の強いジャンルじゃないですか。
他のモノに比べて、極端に手を加える要素が少ないコンテンツなんです。
極論を言っちゃえば、ただ目の前で行われていることを、そのまま放送してしまえば成立してしまうんですよ。
だから、極力必要のないモノを削ぎ落して、視聴者の皆さんが試合そのものとシンクロできるような中継をやるしかないんだなと。
幸いにも僕が担当になる前から、J SPORTSのJリーグ中継にはそういう要素があったので、それを引き継ぎながらより深化させていくというのが、この5シーズン半で考えてきたことだったと思います。
ゆえに出演者の顔触れも大きくは変わりませんでした。
その“ライブ感”を的確に伝えられる人というのは意外と限られてきますからね。
もちろん実況者、解説者ともに個々の色があるという部分を差し引いても、冷静過ぎても、熱過ぎても、きっと視聴者の方々がシンクロするのは難しいと思いますし、例えば冷静な人が熱くなったり、熱い人が冷静になったりするのも、逆に人間らしくて面白い部分ですし。
まあ、際立って1人だけ皆さんから賛否両論を戴いていた玉乃淳という異色な解説者もいらっしゃいましたが(笑)、彼がハマった時の視聴者の方々とのシンクロ具合は凄まじいモノがあると感じていたので、多少のご乱心には目を瞑りながら一緒に仕事をしてもらっていました(笑)
とにかく“ライブ感”を過不足なく伝えるということに関して、J SPORTSの中継が自信を持っていたというのはお伝えしておきたい所でもあります。
Jリーグを取り巻く視聴環境が大きく変わるこのタイミングで、これまでももちろんそういう想いは持ち続けてきましたが、やはり僕は1人でも多くの人が「スタジアムでサッカーを見よう」と思い、実際にJリーグが開催されているスタジアムに足を運んでくださることを願ってやみません。
僕はJリーグが大好きですし、Jリーグには無限のポテンシャルがあると信じています。
例えば人口7万人の都市で1万人以上を集めるイベントを2週間に1回参加できること。
自分の地域の代表を応援するために、老若男女関係なく1万人近い人が立ち上がってタオルを振り回すこと。
目の前で戦う仲間のために90分間跳ね続け、90分間歌い続けること。
こんなことって普通に生活している中で起こり得ないことばかりじゃないですか。
それもこれもスタジアムに行くからこそ体験できることですよね。
僕はよっぽど最寄駅からの距離が離れていない限り、スタジアムまでは歩いて行くようにしています。
普段の移動中はほとんど音楽を聴いていますけど、その道のりだけはイヤホンを外して、周囲の会話に少し聞き耳を立てながら(ごめんなさい!)、スタジアムまで歩いているんです。
面白いですよ、皆さんの会話!
普段メディアとして活動している限り、絶対に知ることのできないような、サッカーを見る方々の生の視点や生の感想は、僕がサッカーをより深く知る上で間違いなく大事な要素になっています。
ああ、一応「盗み聞きする気はないんですけど、ただ歩いているから聞こえてくるだけだし、そもそも突然話し掛けられたら皆さんも気持ち悪いでしょ」という言い訳ぐらいさせてもらっても良いですか?(笑)
スタジアムへと続く道に咲く、家族連れの皆さんの楽しそうな笑顔。
スタジアムへと続く道に咲く、自らがサポートするクラブについて楽しそうに話すオシャベリ(文句あり、称賛あり)。
そしてスタジアムへと続く道に咲く、色とりどりのカラフルなユニフォーム。
あの光景を見るたびに、僕はJリーグが持つ無限のポテンシャルを感じずにはいられないのです。
中継事業者という恵まれた環境とは(おそらく)別れの時が来ましたが、来シーズン以降もJリーグを見ることの楽しさを、Jリーグを見ることの喜びを、皆さんとより共有できるような仕事をしていきたいと思っていますし、しなければいけないとも考えています。
これからもみんなで、みんなの力でJリーグの魅力を高めていきましょう!
2017年シーズンのJリーグにも、たくさんの楽しさや喜びが溢れていますように!