1月15日の日曜日、有名な世田谷のボロ市へ行ってきた。
この市は、北条氏が関東を納めていた16世紀から始まったもので、東京都の無形民俗文化財に指定されている。
元々は古着を売っていたことからボロ市と呼ばれるようになり、現在は曜日にかかわらず1月15,16日と12月15,16日に開催されている。
ホルヘは世田谷区に隣接する杉並区、しかも世田谷区に近い場所に住んでいながら、ボロ市を訪れたのは今回が初めて。
日曜日ということもあるのだろうが、身動きもできないほどの人出に驚いた。
この冬一番といわれる寒い日だったので、飲む点滴と最近話題の甘酒で暖まり、革ベルトを600円の安値で購入した。
市が開かれるのは、ボロ市通りと呼ばれる500メートルほどの商店街。
昔ながらの古着も数店で扱っているが、地元の商店が家業の商品を売ったり、問屋が在庫処分をしているところのほうが多く、ホルヘが買ったベルトも含め、ほとんどが新品。
ボロ市というので、ガラクタがたくさん売られているのかと思っていたので、少し拍子抜けした。
海外では、「蚤の市」というものがよく開かれている。
工芸品や食品といったまっとうな商品も数あるが、中にはとんでもないガラクタを売っている店がある。
ウルグアイはモンテビデオのセントロから、目抜き通りの18・デ・フリオをセンテナリオ・スタジアムへ向かったところに建つ国立大学の前あたりには、毎週日曜日にトゥリスタン・ナルバッハという市が立つ。
ここで見かけたのは、錆びたナット。
ボルトとナットのナットだ。
それの使用済みが、ボルトなしのナット単体で売られていた。
こんなもの、一体誰が買うのだろうか。
その店では他にも、ドアの取っ手など古びた金具を売っていたが、ひやかしで眺める客もほとんどいない。
市で売るより、屑鉄屋に持って行ったほうが金になると思った。
また南米には、「泥棒市」と呼ばれるものもある。
以前エクアドルで、知り合いの旅行者が車上荒らしの被害を受けた。
レンタカーを路上駐車していたら、ガラスを割って車内に入られたのだ。
こうした泥棒の主な目的は、カーナビやカーラジオ、カーステレオを盗むこと。
カーナビを純正品として取り付けて販売されている自動車もあるが、多くの人はカーナビを別に購入するのではないだろうか。
こうしたカーナビはパネルに組み込まれていないので、簡単に盗める。
南米ではカーラジオとカーステレオが自動車についていないことが多く、必要な人は自分で買って取り付ける。
ボカのホームスタジアムのボンボネーラでは、試合前やハーフタイムに、「カーラジオ、ネルソン」の場内CMが頻繁に流される。
それほど、別売ラジオはポピュラーなのだ。
取り付けは簡単なので、簡単に外して盗むこともできる。
これに対抗するため、ワンタッチ着脱式が生まれた。
自動車から離れるときはこれを外し、シートの下に隠したり、トランクに入れる。
ラジオが泥棒の目に留まらなければ、ガラスを割られることはない。
件の旅行者のレンタカーは、パネルに組み込み式の純正ラジオがついていた。
泥棒は、そうとは知らず車に侵入したが、ラジオは取れない。
そこで、ボリューム調整とチューニングのツマミを引き抜いて持って行った。
そのままレンタカー屋に返すと高い修理代を取られるので、被害者は自分で直そうとした。
しかし、ガラスは修理工場で直せるものの、ラジオのツマミをどこで手に入れればいいのかわからない。
その話をバーでしていると、地元の常連が、「〇〇通りに自動車の部品を売っている露店がいくつもある。そこへ行けば手に入るよ」と教えてくれた。
しかしラジオのツマミまであるとは、彼はもちろん、同席していたホルヘにも思えず、それを質した。
すると常連は、「あそこは盗んだものを売っているんだから、盗まれたのならあるさ」との答え。
被害者は半信半疑で翌日行ってみると、本当にツマミが売られていた。世の中には、いろいろな市があるものだ。