世界一金持ちのサッカー選手は誰か?
 
 
普通に考えればメッシかC・ロナウドだが、アメリカの経済誌フォーブスによれば、ファイク・ジェフリ・ボルキアなる選手がそれだという。
しかも彼はまだ19歳。
無名の若手選手が、なぜそんなにお金持ちなのか。
 
 
ボルキアというのはブルネイの王族の姓で、彼は現国王の甥っ子。
将来国王になる可能性は非常に高いらしい。
ブルネイはアジアの小国ながら石油と天然ガスといった資源が豊富で、経済的に高い水準にある。
一人当たりの国民総所得は日本以上だ。
 
 
絶対君主制で国王は首相を兼任し、大臣も国王が選任する。
国王及び王族に権力が集中した国家体制ながら、北朝鮮のような独裁弾圧国家とは違い、所得税と住民税はなく国民への福祉も行き届いている。
とはいえ王族もしっかりと金を溜めこんでおり、総資産は25兆円以上でロールスロイスを600台所有しているとか。
 
 
ファイク王子は19歳ながらA代表のメンバーで、これまで9試合に出場し1得点をマーク。
いくつかの試合ではキャプテンを務めた。
サッカー協会会長の姓もボルキアなので、当然、王族筋。
キャプテンになったのは王子という地位だったのかもしれない。
ちなみに、ブルネイのFIFAランキングは190位。
 
 
しかし実力はあるようで、アジアのユース大会ではかなりの活躍をしたそうだ。
そして現在はレスターシティの2軍に所属している。
レスター程度ならクラブごと買収できそうなので、金の力で入ったとも考えられるが、そこまで疑うときりがない。
 
 
イギリスのデイリーミラー紙は、王子はレスターにきて1か月の間に3500万ドルを使ったと報じている。
高級車や宝石、アクセサリーを購入したとのことだが、3500万ドルといえば約40億円。
不動産でも買わなければ消費しきれない金額だ。
きっと、ものすごい豪邸を購入したのだろう。
個人資産額は不明ながら、この王子が世界一裕福なサッカー選手というのは間違いないようだ。
 
 
彼はまだ若く、夢と希望に満ちている。
しかも、金のためにサッカーをしているわけではない。
しかし一般のプロ選手は、生活のために競技に取り組んでいる。
好きで始めた競技でも、仕事なればプレッシャーや苦痛が増える。
レベルの向上あるいは維持のためには、日々のトレーニングは欠かせない。
さらにボクサーともなれば、苦しい減量までセットとなる。
 
 
主要4団体の一つIBFでは、計量を試合前日と当日の2回行う。
前日計量は、その階級のリミット内に体重が収まっているかを計るもので、当日の軽量は、前日より4.5キログラム以上増加していないかを調べるもの。
IBFルールでは、4.5キログラム以上増えていたら失格となる。
わずか1日で4.5キログラム増えるというのは信じられないが、それほどボクサーの減量は過酷だという証。
全身がカラカラになるまで絞り切るのだ。
 
 
ラスベガスを主戦場とするチャンピオンは、1試合で何億円、何十億円のファイトマネーを手中にする。
一生安泰な大金を稼いでも、なぜイバラの道を歩き続けるのだろうか。
ホルヘは、かねがね不思議に思っている。
  
 
年末に、3階級制覇の井岡一翔が引退を表明したが、あれが普通ではないだろうか。
サッカーや他の競技でも、長くやっていれば身体のどこかに故障を抱えてしまう。
現役を続ける限り、痛みと付き合わなければならない。
成績が悪ければファンから非難されマスコミから叩かれ、活躍しても相手ファンから罵倒される。
割に合わない仕事だと思う。
 
 
アビスパ福岡でもプレーした元アルゼンチン代表のトログリオ。
セリエAでたっぷり稼いだ彼は、2002年にヒムナシアで引退した。
その後、しがらみのある4部リーグクラブでプレーしたが、それは遊びのようなもの。
実質の引退は02年だ。
その時点でもチームの中心選手だったが、彼の代理人から聞いた話では、「練習するのが、もう嫌だ」という理由で引退を決めたそうだ。
金があれば、努力するモチベーションが下がるのは人情。
メッシやC・ロナウドにそのような考えはないのだろうか。
 
 
さてこのトログリオが、今は別の道で苦労している。
これまでアルゼンチンとパラグアイで12年間監督業をしていた彼は、今期からペルーのウニベルシタリオを率いることとなった。
このクラブはUNIVERSITARIOの頭文字から「La U(ラ・ウ)」と呼ばれ、ペルーリーグのビッグクラブの一つ。
今年のコパ・リベルタドーレスにも出場する。
 
 
ところがこのLa Uが経済的に危機的状態で、借金まみれで選手の給料も払えない。
このため多くの選手がチームを去り、サッカー協会からは勝ち点2のマイナスと、今年6月まで新加入選手の獲得禁止というペナルティを受けた。
選手多数が抜けて外部から補充できないではチームが成り立たない。
やむなくトログリオはユースから15名を引き上げ、このお子様チームでリーグとコパ・リベルタドーレスに挑むこととなった。
 
 
世の中、金のあるところにはあり、ないところにはないものだ。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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