古くからのアルゼンチン人の知り合いに、「ウシさん」というおじいさんがいる。
牧場主のお金持ちで、牛を育てて売る肉牛生産者なので、日本人相手には自らウシさんと名乗っている。
 
 
ホルヘが日本を発つ少し前に、彼からメールがあった。
以前、ブエノスアイレスで日本料理屋を営んでいて今は日本に戻った人に連絡を取りたいのだが、何度電話をかけてもつながらないというのだ。
メールにその人の携帯番号も記されていたが、それではつながるわけがない。
東京の局番03と携帯の090が両方書かれている。
ホルヘが03を外してかけたら、一発でつながった。
そこでウシさんに連絡するように伝え、この件は簡単にかたづいた。
 
 
ホルヘにすれば労力ほぼゼロだったが、ウシさんは大事な孫にかかわることなので大いに感謝してくれ、一度ご馳走してくれるということになった。
ということで、先週、豪華な肉料理を食べさせてもらった。
 
 
店はLa Brigadaという、肉の専門家であるウシさんが太鼓判を押すパリージャ(炭火焼のステーキ屋)。
店名の由来は聞かなかったが、Brigadaというのは旅団とか隊など軍隊の組織のこと。
アメリカのテレビドラマ「特攻野郎Aチーム」は、スペイン語圏では「Brigada A」と呼ばれている。
 
 
住所はEstados Unidos 465でサンテルモ地区。
このサンテルモ地区はタンゴで有名な場所で、タンゴショーなどの店が多い。
レトロな街灯や石畳の道があり、ノスタルジックな雰囲気を味わえる。
以前は危険地帯といわれていたが、現在は夜でも外国人観光客が普通に歩いている。
 
 
ボーイが持ってきたメニューを見ると、さすがに高い。
普段ホルヘが行く店の3~4倍はする。
ウシさん曰く、肉の質が最高なのだそうだ。
 
 
とりあえず飲み物を決めることにし、ホルヘは招待客らしく「マルベック(赤ワインの一種)が呑みたい」とリクエストを告げ、注文はウシさんに任せることにした。
しかし彼はウィスキーを呑むといい、「なんでも好きな銘柄を頼みなさい」という。
ワインリストには、下は約3000円から上は約15000円までのものが並んでいる。
日本の高級レストランなら、15000円のワインは特別高くないだろう。
しかしそれはフランスあたりからの輸入品だ。
国産のアルゼンチン産のワインがその値段というのは、かなり高い気がする。
あまり高いワインを頼むのは気が引けるし、安いのも失礼なので、中間の約7500円を頼む。
さすがに旨い。
ちなみにホルヘがいつも家で呑んでいるのは、約280円のマルベックだ。
 
 
前菜にチンチュリンという小腸を頼んだ。
仔牛のものなのか、普通のチンチュリンよりかなり細いうえ、それが編んである。
手の込んだ仕事だ。
 

 
 
メインはオホ・デ・ビッフェという赤身の柔らかいステーキ。
ジューシーで大変結構なのだが、ワインとサラダ、チンチュリンでお腹はかなり出来上がっており、最後のほうは食べるのに悪戦苦闘という感じだった。
しかし80歳くらいのウシさんは、メインのステーキをペロリとたいらげ、まだ余裕あり。
やはり、肉食育ちの人にはかなわない。
 

 
 
この店のもう一つの特徴は、サッカーグッズがいろいろと展示してあること。
実際にサッカー選手もよく訪れるようで、サイン入りユニホームが壁や天井に飾られている。
ホルヘの席の真上には、元アルゼンチン代表で元ボカのパレルモのユニホームがあった。
さらにサッカーサロンのスペースが別にあり、ちょっとした博物館のようになっている。
 

 

 
 
値段はちょっと張るが、堅苦しい店ではない。
肉は旨いし、サッカーの展示品も楽しめる。
運が良ければ、サッカー選手と会えるかもしれない。
ブエノスアイレスへ来るチャンスがあれば、是非、行ってもらいたい店だ。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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