チリ戦はパルティダッソ(好ゲーム)、ウルグアイ戦はそれを上回るパルティダッソ、そして最後のエクアドル戦は前の2試合と比べるとスピード感に欠けたものの、終了間際のお互いのシュート合戦は手に汗を握った。
エクアドルは太平洋側の平地と山岳地帯、さらにアマゾンのジャングルと三つの地域に分かれている。
この中で人口が集中しているのは平地と山岳地帯。
港湾都市のグアヤキル、標高2800メートルの首都キトなどがその代表格。
エクアドルはスペイン語で赤道を意味し、国は赤道直下に位置している。
したがって平地は猛暑だ。
山岳地域のクラブは日々高地トレーニングをしているので心肺機能は高いが、平地でのアウェイ戦は暑さに苦しむ。
そして平地のクラブは、高地に行くと薄い酸素に疲弊する。
お互いにアウェイ戦では走れないのだ。
そこで自然と、体力を温存するスローペースが持ち味となる。
日本戦では前半途中から、DF同士で何度もパスを回してギヤを落とした。
それまでが落ち着かない展開だったので、日本もこれ幸いとそれに合わせたが、結果的には相手のペースに陥ったともいえる。
チリ戦のように終始アグレッシブにプレーしていれば、勝ち点3を取れたと思う。
 
 
若手主体の日本は善戦以上の戦いぶりを披露し、まかり間違えば勝ち点6もあり得た。
しかし、終わってみればグループリーグ敗退。
あと一歩の壁を肌で感じたことは、五輪へ向けてまたとない糧となったはず。
これを生かさねば、コパ・アメリカへ来た意味がない。
 
 
チリは南米で最も洗練されたチーム。
ヨーロッパに近いといってもいいだろう。
すなわち正統派だ。これは日本にもいえることで、両者は同タイプ。
したがって、お互いに戦いやすい相手といえる。
日本は持ち味を出し決定機を作ったものの、結果は0-4の大敗。
やはり、ヨーロッパ系は苦手なのか。
幕内力士が相四つだからと格上の大関や横綱とガップリ組めばどうなるか。
たしかに自分の力は出しやすいが、それは相手も同じ。
となれば、実力上位の大関、横綱に分がある。
日本代表もフィジカルや体の厚みといった身体構造で引けを取る相手に終始ガップリ四つでは分が悪い。
正攻法をベースに、立ち合いの変化や引き技といったといったオプションにも目を向けるべきだろう。
 
 
第3戦でそのチリを1-0で破ったウルグアイとの引き分けは金星に近い。
しかし、課題はエース対策。
ウルグアイの両FWスアレスとカバーニは、南米最強の2トップと呼ばれる強力コンビ。
当然、日本も彼らを研究して最大限の注意を払っていたはず。
それでもスアレスに6本(PK除く)、カバーニに7本のシュートを許している。
これは打たれすぎだ。
普段の彼らからすれば、これだけ打てば1~2本は入っている。
厳しくマークされていてもシュートを放つから世界的ストライカーなのであるが、それをそのままにしていたら進歩はない。
ゴールゲッター対策も見直してもらいたい。
 
 
エクアドルは多少アフリカ的なチームだった。
日本の選手は相手の長い脚に戸惑っていたように感じる。
抜けるはずが相手に引っかかったり、切り返しの大きさについていけないケースがあった。
しかしここでの体験が、今後のアフリカ勢対策に役立つだろう。
 
 
日本対エクアドルと同時刻に行われたウルグアイ対チリは、カバーニのゴールでウルグアイが1-0の勝利。
この試合にサポーターが乱入した。
闖入者は警備員に追われながらピッチ中央へ走ってきた。
すると近くにいたチリのハラが男の脚を軽くキック。
得意(?)の反則が見事に決まり、男は転倒して取り押さえられた。
ハラの警備員へのナイスアシストだった。
 
 
しかしウルグアイのスアレスはすかさず主審に駆け寄り、「蹴ったぞ。退場だ」とアピール。
たしかにルールでは、相手が誰であろうと暴力を振るえば退場処分となる。
一主審はこれを適用せず、そのまま試合を続行させた。
そして後日の検証でも、ハラの行為は反則ではないと判断された。
当然といえば当然だ。
 
 
実はハラは、15年のコパ・アメリカでのウルグアイ戦で、カバーニを挑発するため尻に指を突っ込んだ男。
激高したカバーニが振り払った手をうまく顔に受け、まんまと退場に追いやっている。
 
 
こうした因縁はあるものの、あの状況で、「退場だ」とアピールしたスアレスはすごい。
ずる賢さを超えて、勝つためには何でもするという貪欲さ。
世界的ストライカーが、恥も外聞もなくそこまでするのだ。
こうした部分も日本にはまだ足りないのではないだろうか。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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