2回戦でJ1のコンサドーレ札幌を延長戦の末に5-2で撃破し、一躍天皇杯の注目チームとなったいわきFC。
「日本のフィジカルスタンダードを変える」「いわきを東北一の都市に」などキャッチーなスローガンも含めて、注目を集めているクラブであることは間違いないと思います。
3回戦ではアウェイの日本平で、やはりJ1の清水エスパルスと対戦したのですが、僕はいわきFCでプレーしている、ある選手を訪ねるためにその一戦へ行ってきました。
 
 
古山瑛翔。23歳。
3バックを敷くいわきFCの左センターバックとして、チームを最後方から支えるレフティは、クラブが本格的な強化に乗り出した昨シーズンからチームに在籍。
不動の中心選手の座を確保しています。
 
 
そんな古山選手に僕が初めて会ったのは2011年2月。
「Foot!」のフランスロケに行った際、当時JFAアカデミー福島からボルドーにサッカー留学していた古山選手に、現地でインタビューをさせてもらったんです。
高校2年生だった彼はフランスに渡って1ヶ月ということで、チームに順応しようとしている最中。
話を伺った時には少し内気な感じのする少年でしたが、ピッチに立つと得意の左足を生かしてアピールする姿勢も強く、「若いのに凄いなあ」と感じたのをはっきりと記憶しています。
 
 
その後、なかなか名前を聞く機会がなく、「どこでプレーしているのかなあ」と気になっていた古山選手の情報が飛び込んできたのは昨年のこと。
数々の新たな試みで注目を集めていたいわきFCに加入したリリースが発表され、「ああ、日本に帰ってきたんだ」と。
どうやらフランスのクラブを経て、スロヴェニアでもプレーし、中高時代を過ごした福島の地へと帰ってくることになったそうです。
このリリースを目にしてから、どこで古山選手に会いに行けるかをずっと探っていた中で、今回の天皇杯がチャンスだと思い、日本平へと向かった訳なんです。
 
 
ボルドーで練習は見たものの、試合に出ている彼を見るのは初めて。
もちろんディフェンスをベースに置きながら、時には高い位置まで駆け上がって攻撃参加。
前半には決定機に繋がるクロスも供給するなど、攻守に躍動します。
結果的には0-2で敗れたものの、チーム自体も何度も良い形でチャンスを創るなど、一定のパフォーマンスは披露。
今後への可能性を大いに感じさせる90分間だったことは間違いありません。
 
 
試合後。
ミックスゾーンで待っていた自分の視界に古山選手が飛び込んできます。
呼び止め、こちらから名前を名乗り、「実は6年前にボルドーでインタビューさせてもらった…」「ああ、覚えていますよ!覚えてくださっていたんですね!」「それは覚えていますよ!」というやり取りを。
6年ぶりに再会した彼は、すっかり逞しくなって僕の前に立っていました。
 
 
「やっぱりエスパルスさんという重圧と、この雰囲気に少し飲まれましたね」と話しながら、「自分たちはフィジカル面と走力面で勝てた部分はあったんですけど、もう少し技量の面を突き詰めていければ、J1に対しても屈しないプレーがもっともっとできるんじゃないかなと思います」と一定の手応えも掴んだ様子。
「やっぱりいわきというのは自分にとっても中高と育ってきた地ですし、そういった面でこういう大きな舞台で、いわきFCというのを全国に知らしめることができれば、いわき市のみなさんにも勇気を与えられると思いますし、さらなる復興に向けての良い兆しになると思うので、自分たちもしっかりと1日1日を大切に、いわき市でサッカーをやっていることに意味を感じて取り組んでいきたいと思います」と今後についても語ってくれました。
 
 
話は6年前のことへ。
当時を振り返って「あの頃に同じピッチでトレーニングした選手が、今は大きな舞台でプレーしているので、そういった意味では自分も負けられないというか、彼らには負けられないという想いはありますし、やっぱりあの6年前に得た経験というのは、もっともっと自分で生かしていかないといけないと思いますし、その経験をさらなる成長に向けて出していきたいなと思いますね」と話した彼に、「あの時はどちらかと言うとボソボソ喋る印象でしたけど、今は全然違いますね(笑)」と水を向けると、「そうですね。あの頃はちょっとガキだったと言うか(笑)、あまり喋ることが得意ではなかったので。
ただ、いわきFCに来て注目していただく機会も増えましたし、話す機会も増えたので、少しは成長したのかなと思いますね(笑)」と笑顔。
とにかく久々に会うことができて、非常に楽しく、嬉しい時間を過ごすことができました。
 
 
いわきFCと古山瑛翔。
彼らには今後も大いに注目していきたいと思っています。
 

写真はボルドーのスタジアム外観です。