7月30日にアルゼンチンで、南米らしい茶番劇があった。
その舞台となったのは、3部リーグの昇格決定戦。
デポルティーボ・リエストラとコムニカシオネスが、2部昇格をかけて争ったゲームでのこと。
第1戦はコムカシオネスが1-0で制し、第2戦はリエストラのホームで行われた。
昇格のためには2-0以上のスコアが必要なリエストラは、前半にPKなどで2得点し、2-0で44分を迎えた。
 
 
コムニカシオネスがラストチャンスで攻め込むと、リエストラの控え選手がピッチ内に侵入。
そして相手選手をマークしたり、ボールに合わせてポジション移動をするなどプレーに参加。
そして他にもサポーターが入りだし、試合はそこで打ち切りとなった。
 
 
試合の続行が不可能と主審が判断すればそこで打ち切ることは、サポーターの暴動や豪雨、雷などの場合にありうる。
主審の権限はそこまでで、その後の対応は主催者が決定する。
 
 
本当ならば、日を改めて残りの時間を行わなければならないが、残り時間がわずかであれば、打ち切り時のスコアで試合が確定してしまうことが南米では多い。
リエストラのサポーターは、これを知っているからこそ試合を妨害して打ち切りに導き、2部昇格を決めようとしたのだ。
リエストラの選手たちも、打ち切りが宣言されるで昇格が決まったかのような大騒ぎをグラウンドとロッカールームで繰り広げた。
 
 
この試合が茶番だったのは、これだけではない。
ピッチに入ったコムニカシオネスの選手たちは、思わず目を疑ったという。
ペナルティエリアがやたらと広いのだ。
その旨を主審に告げたが、「どうしろっていうんだ」と相手にしてくれない。
試合後にテレビ局が以前の試合の映像と比較したところ、左右も縦も約2メートル長かった。
すなわちエリアの横幅は約4メートルも広かったのだ。
 
 
2-0で勝たなければならなかったリエストラは、ペナルティエリアを大きくしてPKのチャンスを増やそうとした。
先制点は右サイドからエリアに入ってすぐの場所で倒されたことによるPKだが、既定の大きさならエリア外だったかもしれない。
 
 
サッカーでは、ピッチ全体の縦横の長さは、基準の範囲中であれば長かったり短かったりが許されている。
しかしペナルティエリアなどその他のラインについては、その長さは厳密に定められている。
すなわち、ゴールポストからタッチライン方向へ16.5メートル、そこから直角に16.5メートルだ。
この試合では全体のバランスをとるためか、ゴールエリアも大きくしてあったが、わかるものが見ればすぐに気づくはず。
試合前にコムニカシオネスの選手から抗議されたのに無視した主審は、買収されていた可能性が高い。
 
 
「打ち切り=結果確定」というケースは多いものの、コムニカシオネスにしても昇格がかかっているので、ここはすぐさま提訴となった。
その結果AFAが下した裁定は、別のスタジアムにおいて無観客で残り5分間の“再開試合”を行うというもの。
 
 
このあたりが、いかにも南米らしい。
ルールを曲げた違法行為を働いたのだから、日本であればリエストラを失格とするのではないだろうか。
しかし5分間の試合で2-0を守り切れば、昇格を認めるというのだ。
クラブやサポーターにとって、昇格はこの上もない慶事。
姑息な手段を用いたのも、それを達するがため。
その気持ちは汲んでやろうということか。
 
 
とはいえ、甘いばかりではない。
昇格しようがしまいが、来シーズンはホームスタジアムが10試合使用禁止。
さらに勝ち点20のマイナスも科せられる。
リーグ全体のシステム変更のため、来期の2部リーグは6チームが降格することになっている。
勝ち点を20も取られると、リエストラはたとえ昇格しても1シーズンでの降格がほぼ確実だ。
 
 
5分間の再開試合は8月3日に行われた。
公平を期すため前半と後半に分けられたものの、なぜか前半が3分で後半が2分。
2011年には30秒ハーフという再開試合があったそうなので、今回も2分30秒ハーフでよさそうなものだが。
 
 
2-0のスコアを死守したいリエストラは5バックで挑んで5分間の完封に成功。
多くの制裁を科せられながら、悲願の昇格を果たした。
 

※写真はイメージで本文のクラブとは関係ありません。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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