過去最高のメダル数を獲得した平昌五輪。
チームパシュートやマススタートといった以前にはなかった種目があるので単純に記録更新とはいえないが、それを割り引いても感動的な大会だった。
 
 
チームパシュートというのは、一体何のことかわからなかった。
しかし、スポーツ報知の表記はチームパシュートでなく団体追い抜きだったので、それを見たときに、「あれか」と理解できた。
団体追い抜きというのは自転車競技にもあるからだ。
 
 
不本意な結果に終わったレジェンド葛西が、「次の北京で金メダルを目指す」といったのを聞き、次回が北京開催だと初めて知った。
ところで、北京って雪が降るのか?
寒いことは寒いだろうが、雪が多いというイメージはない。
気になってネットで調べたら、やはり雪上競技は相当離れた場所で行うようで、しかも大量の人工雪を使用しなければ会場が作れないらしい。
夏季、冬季の五輪とサッカーW杯の開催で日本と韓国に先んじられた中国は、「史上初の同一都市での夏季、冬季五輪開催」を無理やり行なって日韓に対抗しようとしているのではないだろうか。
 
 
カーリングの藤澤ちゃんを見たとき、「オッ、かわいい」と思った。
試合を観るまで、彼女のことは知らなかった。
ストーンを投げた直後の表情と試合中の笑顔が素敵だ。
しかし彼女を上回った金メダル美女は、OAR(ロシア)カーリングのセカンドだかサードの眼鏡をかけていた選手。
ハリウッド映画に出てきそうな美貌だった。
 
 
カーリングは氷上のチェスと呼ばれる。
同じようにアイスホッケーは氷上の格闘技だし、水中の格闘技は水球で、水上の格闘技は競艇だ。
このようなたとえは、言葉を組み合わせてそれまでにないものを生み出すのが常道のはず。
そこでホルヘが違和感を覚えるのは、競技カルタを「畳の上の格闘技」と呼ぶことだ。
カルタの取り合いが非常に激しいので格闘技にたとえるのはわかる。
しかし、畳の上の格闘技といえば柔道という大メジャーがあるので、カルタをそう呼ぶのはピンとこない。
清楚な和服を着て正座している静から、激しいカルタの奪い合いの動へ瞬時に変わるギャップを感じさせるためには、「お座敷の格闘技」のほうが合っているのではないだろうか。
 
 
ホルヘはパシュートもマススタートもわからなかったし、藤澤ちゃんも初めて見たし、次回の開催地が北京だということも知らなかった。
このような日本人は多いと思う。
ウィンタースポーツで毎年注目されるのは、フィギアスケートとたまに葛西、高梨のジャンプ程度。
その他の種目は、一般人とは距離がある。
だから、五輪のとき以外は無関心ということになる。
 
 
南米では、これにさらに輪をかけている。
1年中ほぼ暑いベネズエラとパラグアイはウィンタースポーツと無縁だし、冬は東京並みになるウルグアイは山がないので雪は降らない。
ブラジルの南部も似たようなものだ。
アンデス山脈には積雪があるものの、それほど開発はされていない。
アルゼンチンのバリローチェはスキーリゾート地で、チリにもいくつかゲレンデはあり、たぶんペルーもそうだと思うが、いずれにせよ数は少ない。
 
 
ホルヘが南米でスキーをしたのは一度だけ。
ボリビアにチャカルターヤという標高5241メートルの山があり、その頂上付近にゲレンデがある。
ここが、世界最高地のスキー場だという。
首都のラパスからチチカカ湖を望むルートで2時間ほどの行程。
ラパスの旅行社が手軽な半日ツアーを組んでいる。
 
 
世界最高地でスキーをすべくツアーを申し込みに行ったが、「シーズンオフなのでリフトが動いていない」という。
「ではなぜ、ツアーの募集をしているのか」と問い詰めると、「景色のいいところなので、それを眺めに行く」との答え。
「スキーができないなら行かない」とゴネたら、どこかに電話をし、ホルヘ一人のためにリフトを動かしてくれることになった。
 
 
万年雪ではあるが、その時期は降雪がなくシャーベット状でジャリジャリ。
だから、シーズンオフなのだ。
板も靴もレンタルがあり、身軽に行って滑るだけ。
しかし、標高5000メートルを超える世界は過酷だ。
酸素不足で、2~3回ターンをするたびに立ち止まってゼイゼイと喘ぐ。
ラパスに1週間いて慣れたはずの高地だが、再び高山病になって激しい頭痛に襲われた。
 
 
アンデス山脈系では、あまり麓に雪が降らない。
したがってゲレンデの標高は高くなり、それゆえスポーツとして発展しないのかもしれない。
 
 
アイススケートに関しても、あまり聞かない。
日本より10年早く地下鉄が開通し、南米のパリと呼ばれ以前は世界の先進都市であったブエノスアイレスだが、アイスリンクはあるのだろうか。
ローラースケートでのホッケー代表は強いそうだが、アイスホッケーの話は聞かない。
 
 
こうした状況なので、冬季五輪への関心は低い。
ホルヘの知人女性は大会の存在そのものを知らなかったそうで、「一般人にはそうした人は多い」といっていた。
ワールドゲームズという世界的なスポーツ大会があるが、日本人もそれに対する興味は低い。
マイナー大会というイメージだろう。
南米の人にとって、冬季五輪はそのようなものなのだ。
 
 
その一方で、ほとんどの日本人が知らないであろう大会について、アルゼンチンでは昨年から盛り上がっている。
今年の10月に、ブエノスアイレスでユース五輪が開催されるのだ。
18歳以下の大会だが、IOCが主催し「オリンピック」の名称がついている。
 
 
このような世界規模の大会を開催することは、アルゼンチン国民にとって誇りなのだ。
願わくば、水泳の池江や卓球少女たちが参加し、日本からも注目してもらいたい。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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