コパ・リベルタドーレスの決勝戦がマドリッドで開催されると発表された翌日、試合日程に適したブエノスアイレス⇔マドリッド間のエアーチケットは完売となった。
しかも直行便だけでなく、ブラジルのサンパウロ経由、ウルグアイのモンテビデオ経由、ペルーのリマ経由までもが売り切れ。
この事態にアルゼンチン航空は、2機のチャーター便を飛ばすこととした。
しかし飛行中の機内でリーベルとボカのサポーターが乱闘にでもなれば危険極まりないので、1便をリーベル専用、もう1便をボカ専用とし、なおかつ空港内で両サポーターが接触しないよう出発時刻に数時間の差をつけた。
 
 
試合のチケットは、両チームにそれぞれ25000枚が渡され、そのうちの各5000枚がアルゼンチン国内向け。
しかしこちらは完売とはならず、両チーム合わせて約7000人がアルゼンチンからマドリッドへ向かうこととなった。
 
 
試合日を含む週末は、スペインでは連休中。
このため地方から首都を訪れる観光客が多く、ホテルの確保も大変だった。
日本なら、ホテルに泊まらない弾丸ツアーも珍しくないが、アルゼンチン人は試合前後の雰囲気も楽しもうとする。
金曜日と土曜日の夜には、マドリッドのバーで両チームサポーターの衝突が数件あった。
これも、彼らにとってはお楽しみのひとつだ。
 
 
弾丸ツアーといえば、決勝第1戦を観るために、ある日本人がやってきた。
およそ30時間をかけて午前中に到着し、観戦後に夜の便で発つというスケジュール。
しかし、この試合は豪雨で翌日に順延となってしまった。
仕事の都合で滞在を延ばせなかった彼は、そのまま無念の帰国。
本人がこの件をSNSにあげたため、ニュースでもかなり取り上げられていた。
これを知ればなおさら、アルゼンチン人は弾丸ツアーをしようなどとは思わない。
とにかく、メガクラシコは順延続きの異例続き。
まだまだ、何が起こるかわからなかったのだ。
 
 
マドリッド警察は、レアル対バルセロナのエル・クラシコを上回る4000人態勢で警備に挑んだ。
そして、アルゼンチンの連邦警察と国境警備隊にも協力を要請。
アルゼンチンには、スタジアムへの入場を禁止された者を特定するシステムがある。
スマホのような機器で身分証を読み取り、該当者が入場できないようにする。
これをマドリッドでも活用することとなった。
 
 
バラスの中には、スタンドで観戦できなくても、スタジアムの近くへ行きたいと思うものがいる。
実は、一番危ないのがこのような輩。
出入り禁止のならずものが、スタジアム外で周囲を煽って騒動を起こす。
ボカのバラスのカリスマ的リーダー、ディセオもそのひとり。
前科もあり訴訟中の彼は、気軽に外国へ行けない身だが、今回は裁判所がマドリッドへの渡航を許可した。
「ディセオが来る」というニュースはスペインのメディアでも大きく取り上げられた。
しかしスペイン政府はこの脅威に対抗するため、彼に先立ってマドリッドに着いたボカとリーベルのバラスの幹部を、前科を理由に入国を認めず強制送還とした。
これによりディセオは、マドリッド行きを断念した。
 
 
さらにバラスに対して大きな抑止力となるのが、当初予定されていた24日の試合前にボカのバスへ投石した犯人1名が逮捕されたこと。
渋谷のハロウィンで軽トラを横倒しにしたグループが捕まったの同じように、警察が監視カメラとSNSの映像から割り出した。
他にも7名が特定されているようだ。
犯人には2年4か月が求刑され、それとは別に莫大な損害賠償金が請求される見込みだ。
 
 
SNSの映像では、バス襲撃とは別の容疑で女性が逮捕された。
スタジアム近くの道端で、若い女性が幼児のシャツをたくし上げて何かをしている。
その横に信号待ちで止まっていた車の搭乗者が、一部始終を録画してアップした。
女性は、幼児の腹部に複数のロケット花火を粘着テープで巻きつけていた。
ロケット花火といっても、日本のものよりははるかに強力だ。
当然、スタジアムへは持ち込み禁止となっている。
幼児は自身の4歳の息子。
警察のチェックも子供には甘いので、それを利用して禁止物を持ち込もうとしたのだった。
しかし、爆発物を幼児の体に巻き付けるのはとんでもない危険行為。
これがネットで拡散しニュースでも取り上げられ、この母親は御用となった。
 
 
この原稿は試合の前日に書いているので、マドリッドでのメガクラシコがどのようになったかわからないが、これまでに書いたことから想像するに、大きなアクシデントは起こらないと思う。
 
 
ちなみに、元代表でボカのテベスは、優勝したら引退すると宣言している。
故障続きで中国リーグでは失意のシーズンを送り、ボカに戻ってからも最近はレギュラーから外れている。
しかし、ここ一番の勝負強さと豊富な経験は侮れない。
スーパーサブとして出場し、自らの花道を飾るかもしれない。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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