2月22日、ボリビアのスポーツ大臣が、2030年W杯の南米共催に参加したい旨の発表をした。
何事にも産みの苦しみというものがあり、W杯も同様だった。
FIFAのジュールリメ会長(当時)が、「世界一を決めるサッカー大会を開催しよう」と呼び掛けたものの、肝心の開催国が決まらなかった。
その時代、世界の中心は欧州で、五輪も第3回大会のセントルイス(アメリカ)以外、第10回大会までの9回が欧州開催。
しかし、W杯には乗ってこなかった。
 
 
それを救ったのがウルグアイ。
1924年(パリ大会)、28年(アムステルダム大会)五輪のサッカー王者であることと、建国100周年の目玉を探していたことから名乗りを上げた。
こうして1930年に第1回大会が開かれ、その歴史は現在につながっている。
 
 
04年の五輪はアテネ開催だった。
この大会は記念すべき100周年にあたるもので、それゆえ第1回の開催地であるアテネへと戻ってきた。
となれば、W杯も100周年となる30年大会はウルグアイで開かれるべきだ。
 
 
五輪の場合は、そもそも第1回大会がアテネ開催になったのは、古代五輪発祥の地という理由がある。
しかしウルグアイにも、絵に描いた餅に終わりそうだったW杯を現実のものにしたという実績がある。
それゆえ、30年大会に立候補すれば無風で決まるという思いが強かった。
 
 
しかし問題は、ウルグアイの国力だ。
とても、現在のように拡大化した大会を受け入れられるキャパがない。
そこへ、隣国のアルゼンチンが食指を伸ばした。
ウルグアイが手を挙げれば招致が固い大会に、共催として参加して利を得ようと考えたのだ。
 
 
しかしアルゼンチンも経済的に落ち込み、さらにはFIFAスキャンダルにより南米サッカー界の黒幕たちが一掃され、FIFAとCONMEBOLの蜜月関係は消滅してしまった。
そこで今度はパラグアイも加わり、3ヶ国での共催を打ち出した。
 
 
「100周年大会はウルグアイ」というのが当然の流れとしてとして始まったこの招致だが、その目論見はあっけなく壊れる。
なんと、スペイン・ポルトガル連合、モロッコ、イギリスもやる気満々で参戦し、第1回大会開催国へのリスペクトは何もない。
イギリスはサッカー発祥の地という金看板を掲げ、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド結束による共催。
これは大変な強敵だ。
 
 
イギリスの4か国に対して3ヶ国では分が悪いと見たのか、先ごろチリも加わって南米も同数となっていた。
そしてそこへボリビアが「俺も、俺も」といってきたのだ。
ボリビアの参加はまだ正式決定ではないが、アルゼンチンの招致委員会代表者はこれを歓迎しており、5か国共催の布陣となりそうだ。
 
 
ボリビアは94年のアメリカ大会以来、W杯への出場はない。
開催国となって、久々の出場を果たしたいのだろう。
しかしFIFAはかつて、選手の健康を守るために高地での試合を禁ずるべきだ、とのコメントを出した。
その際にやり玉に挙がったのは標高3600メートルに位置するボリビアのラパス。
招致争いの中でこの問題が再燃するのは必至で、ボリビアは開催権を得るため、「高地でのプレーは選手に悪影響を与える」という説を受け入れてラパス開催を断念せざるをえなくなるかもしれない。
 
 
南米の5か国共催が実現すると、そこで5か国の参加が決定する。南米は全10か国なので、その半数だ。
ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルー、ベネズエラの5か国が、おそらく2ないし2.5枠を争うことになる。
 
 
2.5枠となり3位がプレーオフに勝てば、南米勢は8ヶ国が参戦となる。
悔しい思いをするのは、わずか2か国。
その最有力候補はベネズエラ。
W杯出場を果たしていない南米唯一の国だが、ひょっとすると化けるかもしれない。
 
 
現在、同国の情勢はめちゃくちゃだ。
100万パーセントの超インフレやマドゥーロ独裁政権による迫害で数百万人もが国外に脱出しており、サッカー選手も例外ではない。
ウイラに所属していたウルタードは、規約違反で出場停止処分中とはいえ月に1ドルしかもらえなかったという。
現在はアルゼンチンのヒムナシアへ移籍し、戦力として活躍している。
 
 
このようにレベルの高い国へ逃れてそこで成長する選手は他にもいるだろうし、家族とともに脱出した少年が、その才能をブラジルなどで開花させることもあるだろう。
そうした選手が将来結集すれば、ベネズエラ代表も強くなれる。
しかしそのためには、彼らがすぐ母国へ戻れないよう、現在の国内情勢が続かねばならないのだが。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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