アルゼンチンでは10月27日に大統領選挙が行われ、アルベルト・フェルナンデスが現職のマウリシオ・マクリに勝利した。
新大統領は12月10日に就任する。
 
 
大統領選挙は、大統領候補と副大統領候補のペアで立候補し、国民が直接投票を行う。
元々は、現在も人気の高い前大統領のクリスティーナ・フェルナンデスが復権を狙っていたが、数々の汚職や収賄で裁判中というマイナスイメージがあるため、元首相のアルベルトを大統領候補とし、自らは副大統領候補になった。
とにかく、何が何でも政権に復帰しないと刑務所行きが目に見えている。
娘に至っては、国内にいたらすぐにでも収監されそうなため、難病の入院治療という名目でキューバに逃した。
「副」とはいえ大統領になれば、自分の味方を裁判官にして有利に進められる。
 
 
クリスティーナは、選挙期間中は公の場にほとんど姿を見せず、娘のいるキューバに滞在するなどしていた。
それでいて、決選投票にならず1回目の投票で勝利したのは、精力的に活動したアルベルトの功績が大きかったようだ。
彼はクリスティーナとその夫キルチネル(2010年死去)が大統領時代の首相だった。
しかし辞任後は一転して彼らを強く批判するようになった。
今回はクリスティーナの要請を受けてペアを組んだが、選挙運動中に手ごたえを感じた自身への人気の高さと本来は相容れない政治家としての資質により、両者が決裂することもあり得るんではないか。
 
 
隣国ブラジルのボルソナロ大統領は、今回の選挙結果について、「アルゼンチンは悪い選択をした」とコメント。
12月の大統領就任式にも出席しないと発表した。
南米のトランプからすれば、ペロニスタは信用できないのだ。
 
 
ペロニスタとは、マドンナの映画で有名なエビータの夫である元大統領ペロンの支持者やその政策の継承者のこと。
ペロンはそれまで起業家に搾取されていた労働者の権利を大幅に拡大した社会主義者。
その後も労働者と労働組合は力を増し続け、それが生産性の低下へとつながった。
アルゼンチンに進出した外国企業は、ストやデモに悩まされて多くが撤退している。
 
 
そしてやがてはインフレとペソの下落を招き、国民の生活が苦しくなる。
するとペロニスタ政権は、補助金や財政放出のバラ撒き政策で急場を凌ぐ。
その財源捻出で国庫は疲弊する。
 
 
今回の選挙で敗れたとはいえマクリは、ペロニスタ以外の大統領として唯一任期を満了することとなる。
彼は緊縮政策を打ち出し、経済立て直しのため、企業や社会にも犠牲を強いた。
インフレ抑制策として燃料や食料品などの値上げを抑える場合、クリスティーナはその商品の販売業者に補助金を出した。
業者は、価格を凍結しても補助金によって利益が得られる。
しかし、マクリはそうしなかった。ク
リスティーナは生活保護を手厚くし、働かなくても生活できるという人々を生み出し、マクリはそれに対抗した。
 
 
インフレに歯止めがかけられなかったとはいえ、マクリの政策を支持する国民は多く、今回は40.37%の票を獲得。
対するアルベルトは48.10%だった。
 
 
8月に行われた大統領選挙の予備選挙では、クリスティーナ派が圧勝したため翌日にペソが大暴落した。
今回は結果がほぼ予想されていたためペソ相場に大きな動きはなかったものの、財務省はドル買いに規制を設けた。
個人によるドル買いは、ネットなどのホームバンキングで月に200ドルまで、銀行窓口での購入は月に100ドルまでとなった。
キャッシュカードやデビッドカードによる外国での引き出しも月に200ドルと制限された。
 
 
我々日本人は、貯金は美徳と教えられてきた。
コツコツとお金をため、大きな買い物や結婚資金、老後の貯えにするというのが一般的だ。
しかし、インフレがある国はそうはいかない。
貯めているうちに価値が下がってしまうのだ。
2003年にホルヘが現在のマンションを購入したとき、管理費は月額49ペソだった。
しかし、今月は何と3138ペソ。
およそ64倍になっている。
2002年以前は1ペソ=1ドルの固定相場だったので、当時の100ペソは1万円とほぼ同じ。
しかし今の100ペソは200円ほどの価値しかない。
ペソは貯金すると目減りするのだ。
 
 
そこで国民は、「生活が苦しい」といいながらもペソをバンバン使う。
また、「6回ローン金利なし」の商品もよく売れる。
半年後には値上がりしているのだから、そのときにローンで購入したほうが得なのだ。
そして、貯金をするならドルに換金する。
修学旅行の積立金なども、ドル建てにすることが多い。
 
 
しかしその換金が制限されたので、いろいろと支障をきたすこともありそうだ。
ホームバンキングなら200ドル、窓口での換金は100ドルというのを聞くと、中央銀行にもドルの現金が少ないことがうかがえる。
ホームバンキングだと通帳処理だけだが、窓口では現金を渡さねばならない。
現金を減らしたくないから、窓口での換金を半額にしているのだろう。
 
 
ちなみにホルヘは日本から持ってきたドルを月々換金しているが、ペソ安の恩恵がインフレを上回っているため得をしている。
外食はほぼせず自炊だが、毎日タバコ1箱、ワイン1本、ゴルフ2回という消費で、10月は両替した500ドル分のペソがかなり余った。
11月は400ドルで生活できるかもしれない。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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