昨年のコパ・リベルタドーレス決勝はボカ対リーベルのスーペルクラシコだった。
同大会の決勝でこの対戦は史上初ということもあり、サポーターはヒートアップ。
第2戦でリーベルのスタジアムに向かうボカのバスに、沿道のリーベルサポーターが投石。
窓ガラスが割れ主力選手が負傷する事態となった。
当日の試合は中止となり、ボカサイドは「没収試合でボカの勝ちだ」と主張し、リーベルは「公道でのことなのでリーベルに非はなく、警察の責任」と反論。
その後すったもんだの末、なんと決勝第2戦はスペインのマドリードで行われた。
 
 
そして今年のコパ・リベルタドーレスは、準決勝で両者が再び対戦。
当初は地方での開催、または無観客試合も検討されたが、結局はそれぞれのホームに観客を入れての通常試合となった。
もっとも、最近のアルゼンチンではアウェイサポーターは入場できない。
 
 
第1戦アウェイのボカは、投石を受けても割れない強化ガラス使用のバスで乗り込み、第2戦の際にリーベルは、バスの通行ルートをマスコミにも秘密にした。
それぞれの試合には1500名以上の警官が動員され、スタジアム周辺は厳戒態勢。
そのほかに民間の警備員も多数配備された。
 
 
10月2日の第1戦は疑惑の判定によるPKでの得点を含めリーベルが2-0で勝利。
そして22日にボンボネーラで第2戦が行われた。
ボカの選手が入場するとスタンドから紙吹雪が放たれる。
チームカラーである青と黄色に白が加わり幻想的な美しさを醸し出す。
 
 
選手がそれぞれのポジションに散り、いよいよキックオフを迎える。
それに合わせた演出で、場内アナウンスが「10、9,8・・・」とカウントダウン。
大型ビジョンにも数字が表れる。そして「0」となったが、ホイッスルは鳴らず。
しばらくしてもう一度カウントダウンが行われるも、またしても笛は鳴らない。
主審は何をしていたかというと、インカムで審判団と協議。
「ピッチ上を埋めた紙吹雪を除かないと試合ができない」ということになり、お掃除タイムに突入。
およそ10分かけて清掃員が送風機で吹き飛ばし、やっとキックオフとなった。

 
 
今シーズンからリーベルの胸スポンサーはトルコ航空。
ボカは以前からカタール航空なので、スーペルクラシコは奇しくも中東の航空会社対決となった。
試合はボカ優勢ながら得点は1点どまり。
2試合トータルで2-1としたリーベルの決勝進出が決まった。

 
 
試合後、リーベルの選手はピッチ中央で喜びの輪を作る。
するとそこに黄色いベストを着た男が歩み寄り、リーベル選手の肩を抱いて祝福。
ベストには「PCP」と「SEGURIDAD」の文字。
彼はボカの警備を担当するPCPという警備会社の警備員で、この日はピッチ内の警備を担当していた。
「ボカの警備員がリーベルを祝福」という映像がSNSで拡散され、翌日、この警備員は解雇された。
労働組合が強く、すぐにストライキだデモだ訴訟だとなるアルゼンチンだが、この件については「不当解雇だ」という声は起こっていない。
やはり、サッカーのこととなると話は別にようだ。
 
 
さて、もうひとつの準決勝はグレミオ対フラメンゴのブラジル対決。
第1戦1-1の後、フラメンゴはホームのマラカナンで5-0の圧勝劇を魅せた。
これにより決勝はリーベル対フラメンゴの対戦となった。
 
 
今年からCONMEBOLが主催する南米の国際カップ戦コパ・リベルタドーレスとコパ・スダメリカーナの決勝戦は、欧州チャンピオンズリーグのようにあらかじめ指定された会場での一発勝負となった。
その栄えある第1回会場となったのが、チリはサンティアゴのナシオナルスタジアム。
 
 
しかし、今チリは大変なことになっている。
地下鉄の値上げに端を発したデモが暴徒化し、商店やスーパーマーケットでの略奪や放火に発展。
政府は鎮圧のため軍を投入し、夜間外出禁止令を発令した。
これまでに死者が18名出ている。
略奪や放火は許されないが、それに対処する方法が悪かった。
チリも軍事独裁時代という暗黒の歴史をもっている。
今回の軍の投入と夜間外出禁止令は民主化後初のことで、それだけに国民は激しく反発。
大統領が値上げを撤回したにもかかわらず抗議のデモは規模を拡大している。
 
 
はたして、このような国で決勝戦が開催できるのだろうか。
そもそもナイトゲームなので、夜間外出禁止では成立しない。
試合日は11月29日とまだ先なのでまず大丈夫だろうが、CONMEBOLは開催の可否を調査するため、役員をチリに派遣したそうだ。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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