以前も書いたが、ホルヘの家のテレビは衛星放送というのかパラボラアンテナで受信するシステムで、そのせいか普通のテレビより遅い。
一般に普及しているケーブル方式と比較すると、2秒程度映像と音声が遅れて届く。
したがってサッカーの試合を観ていると、ホルヘのテレビ画面でゴールが決まる2秒前に、ご近所から「ゴール!!!」という叫び声が聞こえる。
これでは興味が半減してしまう。
 
 
前回伝えたように、コパ・リベルタドーレスの決勝は、1-0で勝っていたリーベルが、88分から2失点を喫して逆転負け。
フラメンゴが優勝した。
リーベルが先制した際は、街中から「ゴール」の雄叫びが沸き上がった。
もちろんその時点では、ホルヘのテレビではシュート態勢にすら入っていない。
そして88分にも「ゴール」の絶叫が聞こえた。
その中には隣人の声もあった。
ホルヘの隣人はボカファンなので、フラメンゴの得点に熱狂したのだ。
 
 
しかし、これは非常に不思議なことだ。
ボカとリーベルは非常に強いライバル関係にあるが、ボカはすでに準決勝で姿を消しているので、ボカファンにとって決勝戦などどうでもいいはず。
もちろん、リーベルが負けるのを願ってフラメンゴを応援するのは当然だ。
しかし仇敵の試合をわざわざ観るのが理解できない。
もしあのまま1-0で終了していれば、ボカファンにとって最も見たくないリーベル優勝の瞬間を目の当たりにしなければならない。
それは屈辱以外の何物でもないだろう。
にもかかわらず、たとえその屈辱を味わう危険が高くとも、リーベルが負ける瞬間を見て楽しもうとしている。
こいつら、本当に歪んでいる。
 
 
話は変わるが、ひと月ほど前にコロンビアはボゴタにある「日本公園」(PARQUE JAPÓNまたはPARQUE DEL JAPÓN)が南米のネット上で話題になっていた。
この公園はボゴタ北部にあり、「日本公園」という名ながら特別に日本的なものではない。
単に日本という名前を付けた普通の公園だ。
英国大使公邸の真ん前という優雅な場所に位置している。
 
 
しかし公園としては特色がなく、近所の人たちが訪れる程度で利用者は少ない。
そこで役所のスポーツ・レクリエーション局が、さまざまな遊具や施設を造って利用者増を図ることにした。
その改修計画の中には、人工芝のフットサルコート設置も含まれていた。
 
 
この計画に対し地域住民は、公園内の樹木の伐採および移動に反対という立場をとった。
周辺には緑が少ないので、樹木は完全に保護すべきという主張だ。
閑静な地域に多くの人が集まる公園を造ってほしくないという住民エゴが本当の理由かもしれないが、裁判所もこれを支持し、樹木の伐採と移植は禁止となった。
役所は裁判所命令に従い樹木を残すことになったが、なぜか改修工事は当初の計画のまま進めた。
その結果、周囲がフェンスで覆われ人工芝が張られて完成したフットサルコートは異様なものになってしまった。
なんと、両方のゴールの前にまるでゴールキーパーのように樹木が立ちふさがっているのだ。
 


 
これがSNSで広まり、「日本公園」は一躍有名になった。
このシュールな光景を見たさに人は集まるだろうし、話のタネにここでプレーしたいというもの好きもいるだろう。
となれば、利用者を増やすという当初の目論見も達成できる。
この奇怪なコートは、それを狙った役所が意図的に造ったのかもしれない。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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