帰国に際し、エセイサ国際空港まで知人の車で送ってもらった。
空港敷地内に入り、アメリカン航空のチェックインカウンターがあるターミナルAへ向かったが、これまでと様子が違う。
バイパスのような道が造られ、以前のようにクネクネと曲がらず最短距離で行けるようになっていた。
さらにターミナルAの隣にはまだ建設中ながら、近代的な外観の新ターミナルが建っている。
経済危機のアルゼンチンながら、進化しているところもあるのだ。
 
 
成田までのフライトはニューヨーク経由で、今回はプレミアム・エコノミー席での旅となった。
昔はファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスに分けられていたが、場所を取るし高価なため搭乗者が少ないファーストクラスは航空会社にとってお荷物的になってきた。
そこでこれを廃止したり縮小して座席数を増やすようになり、ビジネスの座席はフラットになるなど進化。
座席機能とサービスの質の差が開きすぎたエコノミーとビジネスの間にプレミアム・エコノミーが入った。
座席のゆったり感は依然のビジネスと同等以上で、食事などのサービスもそれに近い。
 
 
航空会社は一人でも多くの客を乗せたい。
そこでビジネスに空席がありエコノミーが満席の上さらに登場希望者がいた場合、エコノミーの客をビジネスに無料でアップグレードして搭乗客を増やす。
しかし聞いた話では、ファーストクラスに一人でも正規の搭乗客がいた場合は、そこにビジネスからアップグレードすることはないという。
それほど、ファーストの正規客はVIP待遇なのだ。
 
 
ホルヘは過去にただ一度、ファーストクラスに乗ったことがある。
大手広告代理店がらみの仕事でロンドンへ行くことになった。
その関係者一行のチケットは広告代理店が手配したビジネス。
しかしエコノミーの搭乗者が多くファーストは無人だったため、幸運にもアップグレードされた。
座席はゴージャスで室内にはバーカウンターまであった。
こんなところで眠るのはもったいないと思い、一睡もせず酒ばかり飲んでいた。
そして、「ファーストは身体に悪い」という結論に達した。
 
 
経由地のニューヨークに到着し、入国審査と機内預け荷物をピックアップして再び預ける。
そして一目散に喫煙所へと向かう。
到着したターミナル8には、各ターミナル間を巡回するエアートレインのホーム階から駐車場へ出たところに灰皿がある。
もちろん屋外だ。
12月、早朝のニューヨークは寒い。
夏のアルゼンチンから来たホルヘは冬装備をしておらず、震えながら立て続けに2本吸う。
我ながら、アホで情けない姿だと思う。
 
 
ニューヨークからはJAL便。
同じくプレミアム・エコノミーだが、サービスの質が数段違う。
これこそが、日本が誇る「おもてなしの心」であろう。
ちなみにプレミアム・エコノミーだと空港内のラウンジが使用できる。
時差ボケを防ぐには機内で早めに寝た方が得策と考え、ラウンジで只酒を飲み、離陸後の食事の際も痛飲。
おかげでぐっすり休むことができた。
 
 
成田に着いても、まず行うことは喫煙だ。
しかし、空港ロビーを出たところにあったはずの喫煙室がない。
ついにここも禁煙かと思ったら、道を渡ったところに移動していた。
こうして喫煙者は、徐々に追いやられていくのだ。
それは時代の流れだが、オリンピックによってさらに拍車がかかってしまった。
 
 
オリンピックといえば、空港から向かった行きつけのバーで、「聖火リレーの最終ランナーは誰だと思う」と訊かれた。
日本中を走るランナーは発表されたが、聖火台に点火する最終ランナーはシークレットになっている。
そのため、ワイドショーなどで「最終ランナーは誰だ」ということが話題になっているという。
街角アンケートでは、イチローが1位だったらしい。
さらに羽生弓弦と浅田真央も上位だという。
しかし野球は国際的にマイナースポーツだし、イチローはWBCの日本代表ではあったものの五輪とは縁遠い。
羽生はありえるかもしれないが、やはりやってほしいのは池江璃花子。
今大会の金メダル候補だったが病に阻まれるも、それに打ち勝ってパリ五輪を目指すというのだから、病気と闘っている世界中の人々に勇気を与える。
まだ世界的なビッグネームになっていなかったかもしれないが、そこは大会組織員会の広報がうまくやればいい。
彼女が最適任だと思う。
 
 
そういうとバーのマダムが、「たしかにそうだけど、病状が変化するかもしれないから、代役も考えておかないと」という。
べつに病み上がりでなくても、交通事故や薬物発覚などで誰だって急にダメになることはあるのだから、万が一のことも考慮すべきかもしれない。
そうなると、大坂なおみか。
ネームバリューはピカイチ。
最近のギスギスした国際情勢を鑑みると、平和の祭典である五輪で、インターナショナルな生い立ちの彼女がスポットを浴びることにも価値があると思う。
以前は二重国籍を都合よく利用しているのだと思い「アンチなおみ」だったが、日本国籍を取得したので応援している。
しかし、大会に出場する選手が聖火ランナーになっても構わないのかな。
 


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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