新コロナ感染を疑われた日本人のグループが、ブンデスリーガの試合会場から退去させられたというニュースがあった。
ハンガリーでも日本人の団体が強制隔離されたり、シンガポール人が暴行されるなど、アジア系への迫害が起きている。
新コロナに対する恐怖が直接の引き金ながら、根本には差別意識もあるのだと思う。
 
 
昨年12月、ウィルスにも差別にも関係ない状態で、一人の男性が観戦中のスタジアムから強制退去させられた。
ブラジル選手権のパルメイラス対フラメンゴでのこと。
エジソンという67歳の紳士はパルメイラスファンながら、最近のクラブに不満を持っていたらしい。
サポーターたちはクラブへの不満の表明や抗議のため、申し合わせて無言の応援をすることがある。
普段ならチャントを歌い拍手を送るのに、そのようなことをを封印することで意思を伝えようとする。
エジソンも、同じようなことをして抗議の姿勢を示した。
ネクタイに帽子を着用という礼儀正しい姿でスタンドに座った彼は、おもむろにマルクスの本を取り出してそれを熟読。
パルメイラスがチャンスやピンチを迎えてサポーターが涌こうが、試合には一切目を向けない。
スタジアムの大型ビジョンにはスタンドの様子も映し出される。
映像カメラマンは、美人だったりユニークな画になるサポーターを探しており、エジソンがその目に留まった。
試合そっちのけで読書にいそしむ姿が流されると、それを観た人の多くは、不可思議な行動を面白がっていた。
しかし一部の熱烈サポーターたちはこれに激怒。
試合を無視するとは許せないという思いや、フラメンゴ側の嫌がらせではないかという疑念からエジソンを取り囲んで険悪な状況となった。
そこで警備員がトラブルに発展するのを防ぐため、エジソンを外に連れ出したのだった。
たった一人の無言の抗議が大型ビジョンに映るところまでは計算通りながら、その後の展開までは読めなかったようだ。
 
 
同じく12月、イングランドのプレミアリーグでは13歳の少年がスタジアムから追放された。
バーンリー対トッテナムでバーンリーファンの少年が、この試合で活躍した韓国人のソン・フンミンに向けて差別的なジェスチャーをした。
監視中のカメラがこれを認識したことから処分となった。
イングランドは根強い差別意識を払しょくするため、公的、法的に差別への対応が厳しい。
この件では警察も動き、クラブは本人や家族と面談を行いこの少年に差別に対するカウンセリングを受けさせることを検討中だという。
 
 
しかしイングランドでこれまで厳しく扱われているのは、民族や国籍、性別に対する差別。
貧富間の格差、貧しいものへの差別は見逃されていた。
それがやっと、プレミアリーグの一事から少しずつ変わろうとしている。
ピッチに選手と手をつないで入場してくるエスコートキッズ。
元々はファンサービスの一環として、サポーターの子息に声をかけたり、社会貢献や新しいファン獲得のため、近辺の学校の子供たちを招待していた。
しかしすでに人気がありサポーターも多いプレミアのクラブでは、これが立派な財源となっている。
ザ・デイリー・テレグラフ紙によると、エスコートキッズ1名から最高で829ユーロを徴収しているという。
およそ10万円だ。
ウエストハムは、普通の試合で592ユーロ、リバプールやマンUが相手だと800ユーロだそうだ。
クラブによってはエスコートキッズの収入が年間60万ユーロにまでなる。
この報道に対しては政治家や知識人から、「金持ち優遇だ。労働者階級に支えられているサッカーの根本に反している」などの意見が出されており、クラブには何らかの対処が迫られている。
しかし、エスコートキッズが有料だとは知らなかった。
Jリーグはどうなのだろうか。


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ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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