開幕の第1節を無観客試合で行ったアルゼンチンのスーペルリーガは、第2節から無期限で延期となった。
4月一杯は無理のようだ。
コパ・リベルタドーレスも5月再開ということで中断中。
6月からのコパ・アメリカは来年へ延期されることとなった。
 
 
僅か1節で終わったスーペルリーガの無観客試合。
南米ではクラブへの制裁として、協会がホームでの無観客試合を命じることが多い。
したがって慣れているともいえるのだが、今回は感染防止が目的だったので細かな人数制限まで設けられた。
選手、スタッフ、役員の総数は各チーム70名が上限で、協会、リーグ役員は30名まで、ボールボーイは12名と規定された。
メディア関係者も大幅に制限され、特別な申請をして許可されたものしかスタジアムに入れない。
このように人数を絞れば、この中の誰かが後に陽性となった場合、接触者を特定しやすくなる。
日本のプロ野球なども無観客で試合を行っているが、同様の措置は取られているのだろうか。
 
 
WHOのパンデミック宣言後、アルゼンチンは素早くコロコロと動いた。
まずは感染国からの渡航者に2週間の隔離を義務化。
ほぼ翌日には、アメリカとイタリア、スペインからの航空便を停止。
国民には500名以上の集会自粛を要請。
トップチーム以外のサッカー試合を停止。
 
 
その後、スーペルリーガを含むトップの試合も停止。
国境封鎖。
そして20日から、特別職を除く全国民に対し、3月末までの自主隔離を義務化した。
薬局での買い物と食料品、日常品の買い出し以外は原則的に外出禁止。
銀行もネットバンキングのみ。
不要の外出をすると3年から15年の禁固刑となる。
しかもこの通告は前日に行われ、「今夜の0時から外出禁止です」という慌ただしいものだった。
この時点で感染者は128名、うち死者は2名。
日本と比べると、「そこまで必要か?」と思いたくなる。
しかしスペインの植民地という歴史を持ち、欧州の移民によって造られた南米の国々にとって欧州は身近な存在であり、あそこでの惨事は他人ごとではないのだ。
 
 
20日はブエノスアイレス州だけで約600件の違反通報があり、逮捕者は全国で200名以上に上ったという。
その多くは、0時までに家にたどり着けず捕まったもので、そのまま自宅に送還された。
警察の捜査はホテルにも及んだ。
旅行者もホテルに閉じこもっていれば違反ではないし、長期滞在用の安ホテルに住んでいる人も出歩かなければ問題はない。
しかし、ラブホテルはそうはいかない。
ここでの密会は不要不急の外出なのだ。
さらに陽が昇ってからは、日課のジョギングをしていたものや仲間とサッカーに興じていた人たちが捕まっている。
政府は、「自主隔離期間はバケーションではない」との広告を出して国民の意識を高めようとしている。
 
 
20日、感染者が158名のコロンビアは、こちらは準備期間を考慮して24日から2週間の自主隔離となることを発表した。
現在でも外出を控えるようにとの要請はしているが、それが強制化されるのだ。
そんな中、話題となっているのは元代表GKイギータのツイッター。
イギータは、超攻撃的GKとして一世を風靡した怪人。
ペナルティエリアを出て相手のパスをインターセプトし、フェイントをかけて相手FWを抜き、その勢いで敵陣に入ってさらにドリブルで進んでラストパスを出す、などということを普通にやっていた。
 
 
1990年のW杯イタリア大会でコロンビアはグループリーグを勝ち上がり、トーナメント1回戦でカメルーンと対戦。
1-1で突入した延長戦で、イギータは得意のプレーでカメルーンFWを抜きにかかった。
このFWは、次のアメリカ大会で42歳と1か月というW杯最年長ゴール記録を樹立したロジェ・ミラ。
そしてイギータはミラにボールを奪われ決勝ゴールのお膳立てをしてしまった。
 
 


イギータはその場面の写真を投稿し、「最近、この写真がよく送られてくる。もしこれが自覚を持つのに役立つなら、私も利用しよう・・・。健康第一。家で用が足りるなら、外へ出るな」とツイートし、さらに写真には、「出るな、といわれたら、出るな」と書かれている。
 
 
当時のマトゥラナ代表監督から、「W杯ではいつものように出るな」といわれていたのに、それを無視して決勝点献上という大失敗をしてしまった。
イギータはその恥部をあえてさらし、外出を控えるようメッセージを送ったのだ。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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