感染者の少ないニカラグアを除き、中南米すべて国でサッカーリーグは中断もしくは打ち切りとなっていた。
そんな中、19日からコスタリカリーグが先陣を切って再開された。
もちろん無観客の上に厳しい感染予防措置を講じてのことだ。
しかし再開2節目にしてFCリモンに6つの掟破りが発覚した。
審判団の入場口に用意しなければならない手洗い所とアルコールジェルがない。
許可されていない人物が試合1時間半前にスタジアム内にいた。
ビジターのロッカールームが狭く選手間の距離が基準に達しない。
入場を許可された人たちの間隔が近い。
ロッカールームの前に手洗い所がない。
後半の入場時に手を洗わない選手がいた。
これらのことが規約違反と判断され、ホームスタジアムの使用禁止という処分を受けた。
 
 
コスタリカには2005年のクラブW杯に出場したサプリサの取材でいったことはあるが、FCリモンという名に記憶がない。
そこで調べてみると、リモン市にあったADリモネンセが2008年に破綻し、それを実業家が買い取ってクラブ名も改めたのだという。
その後は優勝と準優勝はないものの、3位や4位には数回なっている中堅チームのようだ。
もっともコスタリカではサプリサとアラフエレンセ、エレディアーノがガチガチの3強で、113回を数えるリーグにおいて、この3チームの優勝が91回もある。
1部リーグは12チーム構成で、7月から12月の前期、1月から5月の後期に分かれている。
ホームアンドアウエーの総当たりリーグで22節終了後、上位4チームで準決勝と決勝を行う。
さらに決勝の勝者とリーグの最多勝ち点チームが異なる場合は、両者でグランフィナル(グランドファイナル)を行うという複雑なシステム。
再開して現在は18節が終了したところだが、1位サプリサ、2位アラフエレンセ、3位エレディアノーノと3強が上位を独占。
FCリモンは10位と低迷しており、しかも11位、12位とは同勝ち点。
今後の展開では最下位転落、さらには来期の降格までありうる。
処分が響いての2部落ちとなれば、「コロナ降格」と揶揄されるのは必至。
そうならないよう、残り4試合がんばってもらいたい。
 
 
ブラジルとエクアドルからは、日本と多少なりとも縁のある選手のニュースが入ってきた。
ブラジルはフラビオ・ドニゼッチ。
彼は2005年にクラブW杯にサンパウロFCのメンバーとして来日し、リバプールを破って世界王者に輝いた。
当初はメンバーに入っていなかったが、出発直前の練習で負傷した選手の替わりとして召集されるという幸運だった。
その後はポルトゲーザなどに移籍した彼が、コカイン中毒だったことをグローボスポルチ紙に告白した。
 
 
大金を得て車を買い、実家を建て替えて順風満帆だった10年に、初めてコカインに手を出したという。
その後はズルズルと深みにはまり、朝昼晩とコカイン漬けの日々を送る。
蓄えはすべてコカインに消え、兄のタンス預金をくすねるようになる。
そしてついに、クラブW杯のときのユニホームと金メダルをも売ってコカインに換えてしまった。
その後、薬害が心臓に現れて死にかけたことをきっかけに立ち直ったそうだ。
サッカーで得たものをすべてコカインで失ったという、麻薬中毒者の悲惨さを伝えてくれた。
しかしそんな状況であったにもかかわらず、なんと昨年まで現役のプロ選手だった。
昨年はサンパウロの名門ポルトゲーザにも復帰している。
コカイン漬けで心臓を患ったのによく選手が続けられたものだ。
 
 
しかし、心臓病はともかく、麻薬中毒でもサッカーはできるようだ。
マラドーナはその最たるものだが、ドーピング検査のない時代は、試合前にキメて勢いをつけることが、アルゼンチンでは決して珍しくなかったという。
元アルゼンチン代表監督で北京五輪優勝のバティスタも、常習者だったことを公表し、日本に移籍したのは麻薬から縁を切るためだったと語っている。
マラドーナとほぼ同世代の名手”トルコ“ガルシアは、エル・グラフィコ誌のインタビューで、「17歳でコカインに手を出し」「1日10グラム吸うようにまでなった」と告白している。
中毒から抜け出せた人間はこのように公にすることができるが、実際には泥沼にはまったままの者の方がはるかに多い。
くれぐれも、薬物には気をつけたいと思う。
 
 
さて、エクアドルからはゴンザロ・チラことアンヘル・チェメ。
彼は2010年のスルガバンクカップに、リーガ・デ・キトの一員として来日。
そのときはチラだったが、現在はチェメとしてプレーしている。
というか、そもそもの名がチェメなのだ。
アウカスのユースを受けて合格したが年齢がオーバーしていたため、年下の友人になりすました。
それから彼はチラの名で選手登録され、やがてプロに昇格。
そして名門リーガに移籍をするが、スルガバンクカップ後の10年12月、秘密をかぎつけた新聞記者が取材中に誘拐されるという事件が起こり世に知られるようになった。
彼は誘拐には関わっていなかったが、身分証の不正取得などで罰せられ、協会からは2年間の出場停止処分を受けた。
メキシコのビッグクラブであるアメリカ移籍が内定している時期だった。
 
 
チラの身分詐称についてリーガは知らなかったとされていたが、この度チラ改めチェメがテレビのインタビューで当時のことを語り、「日本に出発する前、会長に真実を伝えた」と暴露した。
偽名が発覚した10年当時、このニュースは国外には伝わらなかった。
しかしコロナ禍でスポーツネタが不足しているため、今回は過去にまで遡って各国で報道されている。
アルゼンチンでは、同国のエストゥディアンテスが10年に、なりすましのチラを擁するリーガにレコパで敗れているため、何らかの救済措置があるのではとの憶測まで流れている。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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