黒川元検事長が賭け麻雀をした5月1日に、新型コロナの感染者数が世界10位の9万2,109人で死者数は6,410人だったブラジルは、わずか3週間後の22日には感染者が33万2,382人で2位となり、死者も2万1,116人と急増した。
そんな中でもボルソナロ政権はプロサッカーリーグの早い再開を目指しており、多くのクラブは感染に注意しながら練習を始めた。
しかし感染者の多いリオデジャネイロ州は、州独自の規制を定めてプロクラブの練習も認めていない。
それでもフラメンゴとバスコダガマは練習を強行し、州から警告を受けた。
すると両クラブの会長は首都のブラジリアへ行き大統領と会談。
なんとブラジリアへの臨時移転という話をまとめた。
とりあえずは選手とスタッフを転居させて練習を行うのだが、リオ州が無観客での試合開催も認めないなら、ブラジリアを仮のホームにする案まで浮上している。
一方で同じくリオの名門ボタフォゴの会長は、「我々全員がパンデミックの攻撃にさらされているというのに、サッカーをするなどバカげている」と再開の動きに強く反発している。
 
 
感染者数が11万1,698人、死者3,244人と世界11位で中南米ではブラジルに次ぐ被害を出しているペルーも、政府主導でリーグ再開へ動き出した。
ビスカラ大統領は22日、「サッカーを含む、激しい身体接触のないプロスポーツの再開を許可する」と発表。
これを受けてサッカー協会は、6月からキャンプインし7月のリーグ再開というプランを立てた。
協会の案で目を引くのは、移動による感染拡大を防ぐため、全チームを一つの街に集めてしまうことだ。
公共交通は動いていないので、移動手段はチャーターバスとなる。
国土が広く山道の多いので、バス移動は選手に負担をかける。
それならば、感染拡大のリスクを減らすためにも、1か所に全チームを集めてしまおうという考えだ。
無観客試合なのだから、応援や経済効果の面ではホームで行うメリットは少ない。
しかし、選手は長期間に渡りホテルや慣れないアパートで過ごさねばならず、そのストレスは計り知れない。
 
 
これは、ブラジリアを仮のホームとした場合のフラメンゴとバスコも同じこと。
フラメンゴはクラブが経費を負担して家族も転居させるというが、家庭の事情はさまざまで、一緒に行けない身内もいるだろう。
またペルーのクラブは、財政的に家族の分まで負担できないかもしれない。
一見、妙案と思われるセントラルシステムがどのように進行するか興味深い。
 
 
3月20日から外出禁止令を敷いたアルゼンチンは、首都圏のみそれが解除されず、24日までだった期限も6月7日まで延長されることとなった。
トータルの外出禁止期間の長さは武漢を抜いて2位で、このままではニューヨークを抜いて世界最長となりそうだ。
3月20日から外出禁止をしておきながら、2週間前に1日の感染者が初の200人以上となり、その後は300人超、400人超と次々と記録を更新し、昨日は700人をも突破。
1日の死者は過去最多の17人となっている。
この期に及んでの大爆発だ。
最大のクラスターであるビジャ(スラム街)での増加が止まらない。
 
 
規模が大きく有名で、今回の感染者が多いのはビジャ31とビジャ1-11-14。
ともに住民は約4万人とされる。
1-11-14は市の外れで、サンロレンソのスタジアムに隣接している。
31は、レティーロ駅の真裏に広がっている。
レティーロ地区は市の中心部で、レティーロ駅は、日本でいえば東京駅。
東京駅の裏側にスラム街が広がっているという、信じられないような光景が実在している。
犯罪者率が高く、麻薬組織への強制捜査の場面などがしばしばニュースで流されている。
しかしビジャに通ってボランティアをしている人によると、はじめは外部の者に対する拒絶反応はあるものの、一度打ち解ければとても親身に接してくれるという。
大きなビジャでは生活に必要なものがすべて内部にあるので、中学生くらいの年代でもビジャから出たことがないとか、ビジャの外が怖いと思っていることがあるそうだ。
 
 
アルゼンチンのサッカーは、すでにスーペルリーガは打ち切ったものの、来年のコパ・リベルタドーレスなどの参加クラブを決めるために、9月から短期間で終了する特別大会を開催する方向で話が進んでいる。
24チームを4チームずつ6グループ、あるいは6チームずつ4グループなどに分け、年内で終了するようにする。
グループ分けは昨季リーグの成績によるか、地理的に近いクラブで構成するかなどは今後協議されるという。
 


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ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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