日本が入ったグループHのシード国ポーランドには、格別な思いがある。
ホルヘが少年時代、海外サッカーの報道はほとんどなく、今はなきイレブン、サッカーマガジンという専門誌が外の世界との窓口だった。
そしてもう一つ、伝説のサッカー番組「三菱ダイヤモンドサッカー」が海外の試合を伝えていた。
 
 
ホルヘがW杯と出会うのは、この番組だった。
毎週録画で、1974年西ドイツ大会の試合を放映しており、そこでオランダとポーランドの虜になった。
当時、共産圏の国は、プロ選手が出場しない五輪では優勝などの好成績を収めるが、レベルの高いW杯では苦戦するのが普通だった。
しかし、ポーランドはこの大会で見事3位となったのだ。
 
 
GKはトマシェフスキーで、PKを何本か止める活躍を魅せた。
DFにはゴルゴンという、名前にふさわしい巨漢選手がいた。
そして、中盤の柱はディナ。
テクニシャンでFKが上手いイケメン選手だった。
 
 
当時のフォーメーションは4-3-3が一般的だったがポーランドはやや変則で、ラトー、シャルマッフ、ガドーハの3人がポジションチェンジを繰り返す2トップ。
しかし実際には、左にガドーハ、中にシャルマッフ、右にラトーの形が多かった。
両サイドウィングは破壊的なスピードで相手DF陣を切り崩した。
ラトーは切り込んでのシュートも得意で、7ゴールを挙げて得点王に輝いている。
 
 
ラトーは100メートル11秒台の俊足で、小刻みにボールをまたぐようなステップで仕掛け、そこからロケットスタートで相手を置き去りにする。
テクニックのないホルヘにこのプレーはピッタリだと思い、毎日練習したものだ。
しかし特に足が速いわけではないので、実戦では役に立たなかった。
 
 
このように思い出深いポーランドと日本が同グループになったことは嬉しいことだ。
1974年、日本はサッカー後進国だった。
あれから44年。
あこがれだったポーランドに、我が代表はどこまで迫れるのか。
 
 
ブラジルW杯に続きまたもや同じグループとなったコロンビア。
前回は主力温存メンバー相手に1-4の大敗を喫している。
今回は初戦なので、ベストメンバーで来ることは間違いない。
前回は負傷で外れた、絶対的エースのファルカオも加わる。
さらにやっかいなのは、攻撃的MFのカルドーナが新メンバーとなったことだ。
彼はボールタッチやドリブルが好きな、癖のある選手。
日本選手の常識から外れるところも多いので、戸惑うことがありそうだ。
ロドリゲスが負傷中に代役となり、そのまま定着した。
キレキレのロドリゲス、過激なゴールパフォーマーのファルカオに独特のリズムのカルドーナが加わると、守る方はどのように対処していいかわからくなる。
 
 
しかし、このカルドーナに暗雲が。
コロンビアは、先ごろ韓国とテストマッチを行った。
そこで両チームがエキサイトした際、カルドーナは自らの両目じりを指で引っ張り、アジア人を侮辱するジェスチャーを行った。
すぐにインスタグラムで謝罪したものの、FIFAが最高5試合の出場停止を科す可能性が出てきた。
 
 
出場停止といえば、3週前の「世界最小」の中に書いたペルーのゲレーロだが、1年間の出場停止が確定し、W杯への道が閉ざされた。
南米予選後のドーピング検査でコカインの陽性反応が出たためだが、本人はコカインの使用を否定し、「コカ茶によるものだ」と訴えていた。
コカ茶はコカインの原料であるコカの葉のお茶で、ペルーやボリビアでは普通に飲まれている。
1994年アメリカW杯予選のボリビア対ブラジル戦後、ブラジルGKタファレルがコカイン陽性となったが、そのときはコカ茶のせいだったとして不問になっている。
ゲレーロの弁護士は、「不当な決定なので、最後まで戦う」と、処分の撤回を求めるという。
 
 
グループHもう一つの国であるセネガル。
1987年のキリンカップで来日し、日本とは2-2だった。
試合の印象はほとんどないのだが、民族衣装を着た役員たちを近くで見て、みんな2メートル級の巨人だったことに驚いた記憶がある。
 
 
コロンビアは前回のブラジルW杯直前、アルゼンチンでキャンプを行い、仮想コートジボアールとしてセネガルとテストマッチを行った。
結果は2-2で、技のコロンビア、パワーのセネガルという感じ。
国際的知名度がないため、日本より下と思ったら大間違い。
強引な力勝負に苦戦必至だ。
むしろ、ちゃんとしたサッカーをするポーランドのほうが戦いやすのではないか。
 
 
※写真はコロンビア対セネガルのものです。


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ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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