アルゼンチンリーグでの降格の決定は、プロメディオスというシステムよって行われている。
プロメディオというのは「平均」のことで、つまり1年だけでなく複数年の平均成績によって順位付けされ、その下位チームが降格となるのだ。
  
 
プロメディオは、勝ち点を試合数で割ることで算出される。
したがって1試合平均の勝ち点なので、「勝ち点率」と呼ぶこともできる。
18/19年スーペルリーガ終了時でプロメディオの首位はボカの2.097。
16/17シーズンは勝ち点63、17/18シーズンが58、そして18/19シーズンが51で合計172となる。
これを3シーズンの総試合数82で割ったのがこの数字だ。
1試合平均の勝ち点が2以上というのはかなりなもので、今季終了時では、ボカ以外にこれをクリアしたクラブはない。
 
 
ちなみに最下位は26位のサンマルティンでプロメディオは0.920。
全試合引き分けに相当する1.000にも届かなかった。
このクラブは今季昇格したばかりなので、前シーズンと前々シーズンの成績がない。
このようなケースでは今季のみの成績(25試合で勝ち点23)によって算出される。
 
 
このシステムが導入されたのは1983年から。
アルゼンチンサッカー協会(AFA)のグロンドーナ会長が積極的に採用を働きかけた。
当時はサッカーを媒体とした市場はまだ小さなもので、収入のメインは入場料。
放映権や広告収入は廉価で、副収入のようなもの。
このような状況にあっては、リーグ運営にあたって人気クラブの存在は重要だった。
アルゼンチンではボカ、リーベル、サンロレンソ、ラシン、インデペンディエンテが5大クラブとされる。
実は81年にこの中のサンロレンソが降格しており、それを繰り返さないための策だった。
「ビッグクラブでも最下位になることはありえるが、3年続けて不振ということはないだろう」という考えからだ。
グロンドーナは79年から死亡する2014年までの長期にわたり会長職を務め、終盤は汚職と悪評にまみれたが、元々は母国のサッカー発展のためにその辣腕を振るっていた。
 
 
このシステムはビッグクラブを優遇した不公平なものだという批判はもちろんあったが、ラシン、リーベルが降格したこともあり、「それほど不公平ではないのかも」という認識に変わってきている。
また、時として小さなクラブへの恩恵となることもある。
小さなクラブがリーグで優勝などの好成績をあげ、コパ・リベルタドーレスの出場権を得たとする。
この大会は南米では別格の存在で、初出場を果たしたクラブはお祭り騒ぎとなる。
なんとかこの大会に爪痕を残そうと奮闘するが、小さなクラブは戦力が乏しい。
こちらに全力を注げば、リーグ戦がおろそかになってしまう。
その問題を救うのがプロメディオだ。
たとえリーグで最下位になろうともそこで降格とはならないため、安心してコパ・リベルタドーレスへ挑むことができるのだ。
 
 
このプロメディオス・システムが、どうやら19/20年シーズンから廃止されるようだ。
まだ最終決定はされていないものの、主だったクラブの会長たちはその方向で進んでいる。
最近、アルゼンチンリーグはいろいろと変化があってややこしい。
まずは、グロンドーナの遺言で30チームに拡大された。
しかし不都合が多すぎ、すぐにチーム数削減が決定。
毎年2チームずつ減らし(4チーム降格、2チーム昇格)、最終的には20/21年シーズンから22チームで固定する。
つまり現在は減量中で、真っ先にデトックスされるのは水増しで昇格してきた小さなクラブ。
実力のある中堅以上のクラブは、プロメディオスに頼らなくても地位をキープできる。
さらに22チームまで絞り切った後は、1シーズンだけの成績で白黒をつけたほうがすっきりするし、それがリーグ全体の活性化につながるという考えのようだ。
 
 
今年からは日本のルヴァン杯(Jリーグカップ)に相当するコパ・デ・ラ・スーペルリーガが新大会として発足するなど、アルゼンチンサッカーはなにかとゴチャゴチャしている。