世界中のサッカーファンが驚いたであろう、
マンチェスター・ユナイテッドを27シーズンにわたって率いていた
アレックス・ファーガソン監督の退任。
もはや「いつまで続けるのか?」という疑問すら消え去り、
一生涯ユナイテッドのベンチに座り続けていることが
当然かのように考えていた私にとっても、
今回の発表には小さくない衝撃が走りました。
ファーガソン監督と言えば、
それがユナイテッドというクラブとイコールになるくらい長い時間を
マンチェスターの地で過ごしてきたわけですが、
私は今から5年前に彼がユナイテッドの1つ前に指揮を執っていた
クラブに「Foot!」の取材で訪れたことを思い出します。
そのクラブとは、スコットランドの古豪アバディーンFC。
グラスゴー、エジンバラに次ぐ
スコットランド第3の都市として知られる港町にその居を構えたクラブへ、
やはりファーガソン監督のルーツを探る目的で突撃したのがその時でした。
1978年にアバディーンの指揮官へ就任したファーガソン監督は
すぐさまレンジャーズとセルティックの2強へ割って入るチームを創り上げ、
3度のリーグ制覇と4度の国内カップ優勝、
1度のリーグカップ優勝を勝ち取るなど
クラブを一気に強豪の位置まで押し上げる名将ぶりを発揮。
特に1982-83シーズンには
UEFAカップウイナーズカップで決勝まで勝ち進むと、
レアル・マドリーを倒しての戴冠という偉業を達成。
欧州での名声を着々と築いていった先に、
ユナイテッドへの監督就任があったわけです。
また、ファーガソン監督の薫陶を受けた選手たちは
指導者としても一流揃い。
中村俊輔在籍時のセルティックを率いていた
現スコットランド代表監督のゴードン・ストラカン、
アバディーンにも監督として帰還を果たし、
現在はストラカンの下で代表のアシスタントコーチを務めるマーク・マッギー、
スコットランド代表やレンジャーズの監督を歴任したアレックス・マクリーシュなど
英国内でもその手腕を認められている監督たちが
この港町の古豪から巣立っていきました。
ただ、“ポスト・ファーガソン”に悩まされたアバディーンは以降低迷。
リーグの中位が定位置となり、タイトルには長い間見放されています。
あるクラブ関係者は現状を表現するのに
「ここにはファギーの亡霊が漂っている」という言葉を使っていました。
マンチェスターでの反応はおそらく大々的に取り上げられるでしょうが、
個人的にはアバディーンの人々が
今回の一件をどう捉えているのかに興味があります。
伝説前夜に生まれた、もう1つの“伝説”。
アバディーンの人々は今、何を思うのでしょう。
写真はアバディーンのホームスタジアム、ピットドリーです。