旅打ちの楽しみは博打だけでなく、その土地の風土や食べ物に触れられることだ。
生粋のギャンブラーは、勝てば豪遊、負ければ野宿なのかも知れないが、
ホルヘはとてもそのレベルにはない。
負けても遊べるように博打代とは別に費用を準備し、ホテルも2泊分前払いした。
初日全敗の後、小田原駅近くの洒落た居酒屋で海の幸を肴に日本酒を味わう。
そしてスナックへ突入。
地方のスナックというのは、なかなかいいものだ。
ママやホステスが商売柄積極的に話しかけてくるので、一人でも退屈しないし、
何より地元の情報を取集できる。
2日目の午前中は、スナックでの情報を元に観光を楽しむ。
午前中にもレースはあるが、第1レースから行って全敗すると予算がもたない。
節約のための観光だ。
御幸が浜で海風を浴び、お城のような「ういろう」本店を見物。
ういろうは名古屋が有名だが、実は小田原生まれ。
室町時代あたりから20数代続く由緒ある外郎(ういろう)家が、高貴な客人のために考案したお菓子。
ここでは同名の丸薬も売っており、万能薬としてそちらも有名。
その後は本物のお城である小田原城を巡り、海鮮丼を食べて第5レースから勝負開始。
競輪も競馬同様、GⅠ、GⅡなどのカテゴリーがある。
しかし競馬は、菊花賞などそれぞれのレースがカテゴリー分けされるのに対し、
競輪は全日程をひとまとめにする。
3日開催だと、初日は予選と特選(予選免除者のレース)、2日目が準決勝と一般戦(予選敗退者のレース)、
3日目が決勝と順位決定戦、一般戦となり、このすべてをひとつの大会ととらえカテゴリー分けする。
今回の小田原はFⅠというカテゴリーだった。
競輪選手は実力により、S級とA級に大別される。
FⅠには両方の選手が出場し、1日の前半にA級戦、後半にS級戦が行われる。
準決勝は各級3レースの計6レース。
競輪では、準決勝は「固い」といわれる。
主力選手が各レースに分散するためだ。
しかし「固い」レースほど、本命が来なければ高配当になる。
つまり、「固い」レースは「大穴が出やすい」レースでもある。
穴党のホルヘには嬉しい限り。
6レースすべてを穴狙いで買ったが、世の中甘くない。
かくして、2日連続で全敗となった。