これがアップされるのは、まだ投票日前だと思う。
 
しかし、アルゼンチンではすでに投票は終了した。
 
中国や韓国などの近隣国では10日まで行われるようだが、
 
南米のように遠い国での在外投票は5日から8日までだった。
 
そしてホルヘは、日本大使館で行われた投票の係員としてお国のために働いた。
 
 
 
日本での投票は、届いたハガキを持っていけば投票用紙を渡してくれ、
 
それに記入して投票箱へ入れればいい。
 
しかし、在外投票は実にややこしい。
 
在外投票ができるのは、選挙人証を持っている人だけ。
 
投票者は選挙人証と身分証明証を持参し、係員から本人確認をされる。
 
ここで身分証明書の期限が切れていたりすると、それでアウト。
 
 
 
以前の在外投票は比例代表だけだったので、選挙人証に小選挙区が記載されていない。
 
そこで、それを調べなければならない。
 
ホルヘが主に担当したのは、上記の本人確認と小選挙区探し。
 
小選挙区はパソコンでなく書類で調べるので、市町村が合併したり名前が変わっていると簡単にはいかない。
 
 
 
投票者はそこを突破すると、投票用紙請求書と送付用封筒に必要事項を記載する。
 
投票用紙をもらうにも、請求書が必要なのだ。
 
集まった票は外交官が日本まで運び、外務省か総務省から各地の選管へ郵送される。
 
したがって、在外投票の段階ですべての票は、各選管の宛先が書かれた封筒に入れて封印される。
 
 
 
移住して何十年という高齢者には、これらへの記載が一苦労。
 
日頃日本語を書いていないので、通常の5倍以上のスローペースとなる。
 
もちろん係員が補助をするし、場合によっては代筆もする。
 
なにしろ、日本語の読み書きどころか話せない2世や3世もいるのだ。
 
 
 
今度はその請求書で投票用紙をもらうのだが、投票用紙とは別に内封筒と外封筒も渡される。
 
比例用、小選挙区用それぞれがセットになっている。
 
記入した投票用紙は内封筒に入れ封印し、それをさらに外封筒に入れて封印。
 
そして外封筒に必要事項を記入する。
 
ここで不思議なのは、投票用紙にはローマ字で記入しても認められるのに、外封筒には日本語しか許されないこと。
 
 
 
投票所には全選挙区の政党と立候補者のリストがあり、その中にはローマ字版も用意されている。
 
日本語が書けなくても、ローマ字で投票できるようにという配慮だ。
 
しかし外封筒が日本語限定なので、結局は代理人投票を依頼することになる。
 
「仏作って魂入れず」とは、まさにこのことだ。
 
 
 
外封筒を封印して必要事項を記載したら、それを提出場所へ持っていく。
 
そこでは立会人がそれぞれの外封筒に署名をし、別の係員が比例代表用と小選挙区用の外封筒を、
 
選管宛ての送付用封筒に入れて封印する。
 
あー、ややこしや。
 
 
 
投票所は混んでいない、というよりガラガラだが、移住者は受付から投票終了まで20分前後かかる。
 
あまりにも面倒なので投票しないという人が増えているようで、投票者の数は選挙のたびに減っている。
 
選挙人登録のキャンペーンは地方でも積極的に行ったらしいが、投票所は地方になく、ブエノスの大使館1か所。
 
「今回の選挙は重要だから」といって、トゥクマンからバスで17時間かけて来た人もいたが、これは特別な例。
 
漏れ聞いた話では、今回の在外投票には南米全体で約8000万円掛かっているとか。
 
1票当たりの経費は、相当なものになるはずだ。
 
もっと投票率を上げないと、やがて仕分けの対象になってしまうかもしれない。
 
 

 
 

 
 
 
ホルヘ・ミム~ラ
ラテンのフットボールを愛し、現在はDieguitoアルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。
取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企てては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。
ヘディングはダメ、左足では蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。
女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。