東京の下克上、“社会人”の執念 土屋 雅史 2013年7月26日 土屋雅史 今週の水曜日、東京都サッカートーナメント社会人代表決定戦という ゲームの取材に西が丘へ行ってきました。 何やら長めのタイトルが付いた大会ですが、 簡単に言うと天皇杯の東京都予選。 既に勝ち上がっている大学生との準決勝へ 社会人代表として進出するためのワンマッチがこの大会です。 1試合目はJFLに所属している横河武蔵野FCと 関東1部リーグに所属しているエリースFC東京が激突。 エリースも前半は何とか無失点で凌ぐなど健闘しましたが、 終わってみれば横河が上位カテゴリーの貫禄を 見せ付ける格好で3-0と勝利。 早稲田大学と準決勝を戦うことになりました。 非常に凄まじい激闘となったのが第2試合。 カテゴリー的には第1試合と同様に、JFL所属のFC町田ゼルビアと 関東1部リーグ所属の東京23FCが対峙するゲームですが、 町田は昨年のJ2クラブ。選手は基本的にプロ契約で、 1年でのJ2復帰を至上命令にタレントを多く揃えたチームであり、 選手が働きながら夜9時スタートの、 しかも2時間に満たない練習を週3回こなしている東京23FCとは、 あらゆる面で環境が違うことは間違いない現実。 彼らがどこまで町田を苦しめられるかが、ゲーム前の焦点だったと思います。 ところが、試合開始からゲームの主導権を握ったのは東京23FC。 「格上相手にアグレッシブさを出さずにどうするんだ」と 東京ヴェルディや名古屋グランパスで活躍した米山篤志監督に 送り出された選手たちは、持ち前のポゼッションスタイルを存分に披露。 昇格という目標を考えると苦境に立たされつつある町田が、 少しリーグ戦からはメンバーを入れ替えてきたことを差し引いても、 大いにその“らしさ”を見せ付けてくれたのです。 とはいえ、町田も当然負けるわけにはいかないゲーム。 後半に入ると、日曜のリーグ戦から中2日というスケジュールの 東京23FCは足が止まり始め、町田のラッシュが続きます。 それでも絶体絶命とも言うべきPKのピンチも、GKの岡本翼がビッグセーブでゴールを許さず。 最終ラインも体を張り続け、粘って粘って終盤までスコアレスの状態を保ちます。 すると、西が丘が歓喜に沸いたのはアディショナルタイムの90+2分。 スローインの流れから田仲智紀がドリブルで相手を切り裂き、 上げたクロスを河村太郎が頭でプッシュ。 劇的な決勝ゴールで東京23FCが準決勝へと進出する権利を力強く勝ち取りました。 決勝アシストの田仲は浦和ユース出身。 同期には山田直輝や高橋峻希、阪野豊史らがいた黄金世代で、 中央大進学後も活躍していたものの、結果的にプロからは声がかからず、 社会人としてプレーすることを選択したそうです。 ただ、プロへと進む道を探っていた昨年末、 練習参加した後にギリギリまで獲得の返事を待たされた挙句、 結果的に断りを入れられたのが実は町田。 田仲自身も「今日はやってやろうかなと思っていた」と 自身の秘めた想いを試合後に明かしてくれました。 チームメイトがお揃いのポロシャツと短パンで帰途に就く中、 ネクタイにYシャツ姿でロッカールームから出てきた田仲。 聞けばこの日は内定をもらった会社の内定者会があり、そこから直接会場入りしたとのこと。 人生の大きな決断を下した男が、魂のアシストで引き寄せた勝利。 サッカーとは、そして人生とは本当にわからないものですね。 田仲選手の今後にも是非注目したいと思います。 写真は試合後のピッチ@西が丘です。 Tweet