オードリー春日の影響も多少はあるのか、日本では数年前からピンクのメンズファッションが広まった。
アルゼンチンでも昨年から、ピンクのTシャツやポロシャツを着る男性を見かけるようになった。
しかし基本的に南米では、ピンクは女性の色という固定観念が強い。
10月の第3日曜日、アルゼンチンは母の日だったが、国内リーグの審判団は、
背中に大きく「母の日おめでとう」と書かれたピンク色のシャツを着用した。
これも、母の日だからピンクという単純な発想によるものだ。
したがって、ピンクを着るのは女性、男が着たらオカマ、というイメージがはびこっている。
昨年ベネズエラリーグである事件が起きた。
デポルティーボ・タチラの女性会長スアレスは、乳がんの早期発見や予防などを啓蒙する財団を支援しており、
アトレティコ・ベネズエラとのホームゲームでその運動を大々的にアピールしようとした。
財団のシンボルカラーはピンクなので、ピンク色の服を着て来た女性は入場料を無料にする。
そして、タチラもピンクのユニホームで試合を行うことにした。
しかし、これに一部のサポーターが猛反発。
反対の理由は、ピンクなど着たらライバルチームのサポーターが「オカマ軍団」と異名を付けるのは確実で、
伝統あるタチラの名を汚すわけにはいかないからだという。
そして実力行使でピッチに乱入し、試合を中止に追い込んだ。
これと同様のことが、ボカでも起きるかもしれない。
ボカのユニホームといえば、青をメインに黄色のラインが入ったもの。
サブは黄色をメインした逆色か、白メインというのが多かった。
しかし契約スポーツメーカーの戦略により、最近は変わった色のものも作られている。
そして、今シーズンはピンクになった。
メーカーの狙い通り、スタンドにはピンクのユニホームを着て応援するサポーターの姿が目につく。
しかし、ボカのパラブラバであるラ・ドセはピンクを認めない。
理由はタチラと同じだ。
アルゼンチンリーグでは、相手と色がダブらなければ常にメインのユニホームを使用できる。
ダブった場合は、ホームチームがサブを着用する。
前々節が、ボカ対セントラル戦。
しかし、「ピンクを着たら、試合ができないようにする」との脅迫があり、結局セントラルにサブを着てもらった。
しかしアンヘリッチ会長とリケルメは、「どこかアウェイのゲームでピンクを着る」と宣言し、
バラブラバに屈しない姿勢を示している。
たしかにアウェイでは、ボカのサポーターは決められた席に押し込まれるので手が出しにくい。
それでも、「明日の試合でピンクを着る」という情報が入ったら、移動のバスを襲撃してでも阻止するかもしれない。