786ペソというマンション管理費の請求書が届いた。
闇レートだと1ドルが約12~3ペソなので、1ペソはほぼ10円ということになる。
つまり、管理費が7860円。
12月に払ったときは500ペソ台だったので、日本にいた3か月の間にずいぶん上がったことになる。
当然他の物価も同じで、インフレの激しさを肌で感じる。
しかし現政権はインフレを認めず、役所の統計では物価上昇率を非常に低く算定し、
通常の値上がりだと言い張っている。
思えば経済崩壊前の2001年末までは、1ドル=1ペソという固定相場だった。
国内でもドルが通用し、普通の買い物はドルでもペソでも同じ額で支払えた。
それが今は1ドルが12~3ペソ。12~3倍も下落したのだ。
現政府はインフレを否定しているものの、アルゼンチンは過去に
1000%を超すようなハイパーインフレを経験しているので、さまざまな知恵がある。
たとえば交通違反の反則金は、ガソリンの価格に連動させているそうだ。
「駐車違反は500ペソ」と決めても、インフレにより500ペソが非常に安くなってしまう。
しかし「駐車違反はガソリン○○リットル」としておけば、反則金の価値は物価上昇に左右されない。
10年以上前、コロンビアのサッカーリーグ規則を読んだ時に不思議に思ったことがある。
それは選手への罰金に関する項で、「○○の場合は、最低賃金6か月分の罰金」などと、
具体的な金額でなく最低賃金の何か月分という書き方がされていた。
これもインフレへの対応だと、後になって気がついた。
インフレになれば最低賃金も上がるので、それに合わせることで金額のバランスを取っているのだ。
しかしアルゼンチンのように政府がインフレを認めないと、
当然のごとく最低賃金の修正も行われないので、現実にそぐわなくなってしまう。
アルゼンチンの最高額紙幣は100ペソ札だ。
以前は100ドルと同価値だったが、今は10ドルにも及ばない。
そう、日本の1000円とほぼ同じ。
そこで考えてもらいたいのは、5000円札も10000円札もなく、
日本の最高額紙幣が1000円札だったらどうなるかということ。
財布の中は1000円札で溢れかえるだろう。
今のアルゼンチンがまさにそれ。
市場は500ペソ札や1000ペソ札を望んでいるが、昨年から登場したのはエビータが肖像の新100ペソ札。
これはニセ札防止のためとされているが、実際は政府がエビータ人気を利用したのだといわれている。
「どうせエビータを使うのなら500ペソか1000ペソにすればいいのに」と思うがこれが素人の浅はかさ。
高額紙幣を発行することはインフレを認めることになるので、現政権は頑なに100ペソ札を守っているのだ。
写真は上が旧札、下がエビータの新札です。