パラグアイの通貨はグアラニー。
現在は格落ちしたが、かつては最高級だった老舗ホテルもグアラニー。
1903年に創立された古豪サッカークラブの名もグアラニーだ。
グアラニーというのは、現在のパラグアイ全土とブラジル、アルゼンチンの一部に以前から暮らしていた先住民族のこと。
パラグアイではグアラニー語を話す人も多く、普通のスペイン語の中にグアラニー語が混ざったりする。
元代表GKのチラベルトにインタビューしたとき、いきなりわけのわからない言葉をいわれ、ポカーンとしていたら、「なんだ、グアラニー語しゃべれないのか」とからかわれた。
グアラニー族は、南米に数ある部族の中でも勇猛果敢で知られていた。
 
 
パラグアイのサッカーはタフだ。
かつてW杯予選のウルグアイ戦でこんなことがあった。
ウルグアイの攻撃をしのぎ、クリアしたボールがセンターサークルあたりへ転がった。
このボールにパラグアイFWとウルグアイの最後尾DFが全力で走り寄る。
2人とボールの位置は一直線。
両者は真正面からぶつかるようにして同時にボールを蹴った。
その結果、ウルグアイDFは弾き飛ばされた。
この選手は、当時黄金期だったイタリアのユベントスに所属し、世界最高のDFと称されたモンテーロ。
その鉄人を吹っ飛ばしたのだ。
結局この絶好機から得点には至らなかったが、パラグアイのサポーターは、ゴールを逸したことよりぶつかり合いで勝ったことを評価し、「これがパラグアイのサッカーだ」とホルヘに自慢した。
 
 
そんなマッチョなパラグアイサッカー界にとんでもないスキャンダルが持ち上がった。
昨季まで1部リーグだったルビオ・ニューの会長ゴンサレレスと同クラブの選手カバジェーロが、ベッドの中で仲睦まじく裸で寄り添っている写真が公になったのだ。
これはカバジェーロの代理人であるオサスナのリークによるもの。
 
 
ゴンサレス会長は、「俺の言うことを聞けば、プロにしてやる。いい車にも乗れるようにしてやる。外国へも移籍させてやる」と迫り、カバジェーロをものにした。
さらにベッドでの2ショット写真を撮り、「言うことを聞かないと、これを流出させるぞ」と脅したという。
 
 
カバジェーロは、「チャンスをつかむために会長のいうなりになった。同じことをしている選手は他にもいる」とメディアに語った。
これに対し会長は、2本のビデオをフェイスブックにアップ。
1本は世間に向けたもので、カバジェーロとオサスナは悪い人間である、ということを訴え続けた。
もう1本はカバジェーロに対し罵詈雑言を浴びせかけながら、選手保有権の契約書をビリビリに破り、「お前はもうサッカーはできない」と吐き捨てている。
 
 
メディアがこの話題を大きく取り上げたことで、「うちの息子も被害者だ」という母親が現れた。
息子がユース時代に会長から誘われたが、それを断り、怖くなってサッカーを続けられなくなったと訴えた。
さらにオサスナの調査によれば、25人もの選手が被害を受けているそうだ。
 
 
カバジェーロも他のクラブのユースに在籍していたときに声を掛けられている。
会長は、プロを目指すユース選手を狙い、「プロ契約してやる」との甘言を用いてベッドへ誘っていた。
この問題には警察も動き、セクシャルハラスメントだけでなく、未成年者への性行為強要の容疑で捜査を進めている。
 
 
サッカー協会も反応し、ルビオ・ニューの対外試合禁止処分を下した。
選手に罪はないのだが、全容を解明するにはクラブ全体を調査しなければならず、さらにこの状況で試合を行うと、相手サポーターから辛辣なヤジが飛び、ルビオ・ニューのサポーターと衝突するのは必至だ。
 
 
前代未聞のスキャンダルにより、「今後、サッカーを続けられるか心配だ」と憂うカバジェーロ。
代理人のオサスナは、なぜ顧客が不利になることをしたのだろうか。
実はこの二人は、代理人と選手の関係から相思相愛の同性愛カップルに発展していたのだ。
愛するカバジェーロを会長の毒牙から守るため、あえて公表に踏み切った。
 
 
マッチョの国でありカトリックが強いパラグアイでは、カバジェーロの今後は楽ではないだろう。
同性愛に寛容な、アメリカなどのクラブがこのカップルに手を差し伸べてくれないだろうか。

※写真はイメージです。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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