行ったことはないが、ラスベガスというのはすごい街らしい。
カジノが有名でそれで発展した観光地ながら、様々なアトラクションやショーが充実し、ピラミッドがありエッフェル塔があり、ホテルの中に川が流れるといった、街全体がアミューズメントパークのようなところだと聞いている。
浅田次郎の小説「オー・マイ・ガッ」によると、ラスベガスでは一流ホテルの宿泊代が日本のビジネスホテル並みだという。
ツアーを組んで販売する旅行代理店の中には、正規のコミッションでは利益が薄いので、ホテル代を大幅に上乗せするところがあるそうだ。
なにしろ豪勢なホテルなので、「1泊3万円」といわれても客は納得してしまう。
したがって、ホテルは直接予約したほうが得だ、と書いてあった。
フロントでチェックインして客室へ行くには、広大なスペースのカジノを通る。
客室は広くベッドも大きくソファは高級感があり、カーペットはフカフカ。
五つ星にふさわしい内装だ。
しかしこのハイレベルにもかかわらず、部屋に冷蔵庫はないそうだ。
のどが乾いたら、外に買いに行かねばならない。
そのたびにカジノを通る。
そこで客はフト思い出す。
「カジノで遊べばドリンクはタダじゃないか」。
マナーとしてチップは必要だが、カジノはフリードリンク。
それならば、さらに歩いて買いに行くのは馬鹿らしい。
そして気づくと、ビール1杯に300ドルとか500ドル払っていることになる。
これがラスベガスのホテルの戦略。
部屋代は安くして、客にはカジノで金を落としてもらおうというのだ。
こうしたお金でラスベガスは潤い、税金や公共料金が無料だったりメチャ安い。
そんないい街であれば当然のごとく人が集まり、人口は約60万人。
元々は砂漠だったところが、ネバダ州最大の都市になった。
しかし、ここにプロのサッカークラブはなかった。
それに気づき、「それはおかしい。作らなければ」と決心したのが、Brett Lashbrookなる人物。
なんでも元オーランド市のチーフ執行官であり、MLSの元顧問弁護士で、現在はNHLのコヨーテスの法律コンサルタントだという。
かなり、ちゃんとした人とお見受けする。
ラスベガスにプロクラブを作ろうと思い立ったのは2015年のことだった。
まず取り組んだのはスタジアムの確保。
ラスベガスにはサッカー用のスタジアムがなかった。
約10000人収容の野球場を見つけると、そこを使用しているチームと市役所と交渉し、サッカーもできるように改修。
さらに映画館などの複合施設まで造った。
スタジアム名はキャッシュマン・フィールド。
役所がすぐに乗ってくるのだから、やはりちゃんとした人なのだろう。
そして公募でクラブ名をラスベガス・ライツFCとする。
これはラスベガスの艶やかなネオンなどの灯り(ライト)からきている。
ユニホームはネオンサインのように青、黄色、ピンクでデザインした。
ユニホームで面白いのは、シャツの内側に絵文字のニコニコマークが大きく入っていること。
内側だから、普段は見えない。しかしロバート・秋山の「体ものまね」のTシャツバージョンのようにすると、ニコニコマークが現れる。
これを、ゴールが決まった時のパフォーマンスにしているのだ。
こうして昨年8月にクラブが発足し、今期からユナイテッドサッカーリーグに加盟するプロチームとしてのスタートを切った。
このチームは、とにかくラスベガスらしい。
おそらく、テーマは「夢と自由」なのだろう。
選手入場では、ユニホームを着たマスコットのリャマが一緒。
2頭いて、ボランチのドリー、FWのドッティというキャラ付けがされている。
サブユニホームのお披露目はボディペインティング。
上半身裸の選手にユニホームをペイントした。
大人の夢であるハーレーダビッドソンとも組み、監督がプレスリーの被り物をしてバイクに乗った。
試合で活躍した選手のボーナスは、お金ではなくカジノのチップが渡される。
現金でもらえばそこで終わりだが、チップなら一攫千金の夢が見られる。
そして自由の象徴といえるのが、合法のマリファナ業者とスポンサー契約を結んだこと。
これはアメリカのプロサッカー界では初のこと。
日本人からするとやりすぎのような気がするが、ちゃんとした人物である会長が決めたことなので、アメリカでは受け入れられるのだろう。
日本人といえば、このクラブに東京ヴェルディ、大宮アルディージャなどでプレーした小林大悟がいる。
ひょっとするとユニホームの内側のニコニコマークは、ロバート秋山の体ものまねからヒントを得て、彼が会長に進言したのかもしれない。
※写真はウルグアイのカジノです。