今回のW杯には、サンパオリ(アルゼンチン代表)、ペケルマン(コロンビア代表)、ガレッカ(ペルー代表)、クーペル(エジプト代表)、ピッシ(サウジアラビア代表)と5人ものアルゼンチン人監督が出場している。
これはアルゼンチンサッカーおよびその指導者が世界で高い評価を得ている証で、“5人出場”は国民の誇りとなっていた。
 
 
しかし、この5人がことごとく期待を裏切った。
ピッシは開幕戦でロシアに0-5の大敗を喫し、ペケルマンはキックオフ直後にアクシデントがあったとはいえ、グループ最弱の日本にまさかの不覚など、第1節は1分け4敗。
引き分けたサンパオリも、相手がド格下のアイスランドなので敗戦と変わらない。
 
 
第2節もクーペル、ピッシ、ガレッカが枕を並べて討ち死にし、グループリーグ敗退決定。
未勝利脱出はサンパオリに委ねられた。
アルゼンチン独立の英雄サンマルティン像が建つサンマルティン広場は、銅像側からレティーロ駅へ向かって芝の傾斜地となっている。
この傾斜地を客席として利用し、一番下にパブリックビューが設置された。
平日の午後3時キックオフなのに暇人が多く、会場は超満員。
そしてアルゼンチンはこの観衆を見事に裏切って0-3で敗れた。
 
 
ロシアの試合会場では、敗戦後にアルゼンチン人サポーターがクロアチア人2名を袋叩きにして逮捕され、間もなく国外追放になる模様。
また別のアルゼンチン人サポーターは、街頭でロシア人女性に、スペイン語を教える振りをして卑猥な言葉をしゃべらせ、この動画をSNSに投稿。
これがロシアでもアルゼンチンでも大問題となり、ロシア警察に拘束されたうえスタジアム入場に必要なファンIDが没収された。
大枚をはたいて楽しみにしていたロシアへ行ったのに、つまらない行為によりW杯から追放されてしまった。
 
 
アルゼンチン人監督は敗戦を重ね、前回準優勝のアルゼンチンもグループリーグ敗退の瀬戸際。
そしてサポーターはスキャンダルで世界に恥をさらす。
アルゼンチンの北東に位置するロシアは、まさに同国の鬼門となっている。
 
 
ドイツに歴史的勝利を挙げたメキシコ。
これまでオソリオ監督はさんざん批判を浴びていたが、この勝利で国民は手のひらを返した。
SNSでは聖人扱いしたオソリオの写真が拡散され、「オソリオに謝罪する集会を開こう」との呼びかけも多数あった。
 
 
しかし、万々歳というわけではない。
メキシコサポータの応援は楽しい。
有名な曲シエリトリンドの大合唱は、「これぞメキシコ」と思わせる。
ただ彼らは、少しシャレがきつい。
相手チームのゴールキックでは、GKの助走に合わせて「エー」と唸り、蹴る瞬間に「プット!」と叫ぶ。
プットとは、売春婦や尻軽女を指すプッタの男性形。
したがって、直訳すれば男娼となる。
要するに、相手を愚弄するときに使う言葉だ。
 
 
ドイツ戦でもサポーターがこの応援スタイルを実行したため、FIFAはメキシコ協会に1万スイスフラン(約1万ドル)の罰金を科した。
FIFAはこの応援を、相手を侮辱するものとして禁じている。
協会は大会前に、「プットといわないで」とのメッセージをサポーター向けに流したが、効果はなかった。
 
 
実は、メキシコはこれまでに何度も同様のことで罰金処分を受けている。
しかしサポーターは、自分が払うわけではないので意に介していない。
サッカーは文化だといわれるが、だとすれば長い間行われてきた応援スタイルもその国の文化だ。
「それを禁じるのはけしからん」と、彼らは確信犯として「プット!」と叫ぶ。
今後の試合でも行われれば処分が重くなるのは確実で、メキシコ協会は頭を痛めている。
 


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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