日本が平成から令和となったのと時を同じくして、ベネズエラでも国が大きく変化しようとしていた。
4月30日、暫定大統領のグアイドーが、SNSに軍幹部を従えたビデオメッセージをあげ、マドゥーロ政権打倒を呼び掛けた。
 
 
ベネズエラはチャベス前大統領からガチガチの反米左派主義で、マドゥーロは癌で亡くなったチャベスから指名されて後任となった。
マスコミ弾圧などチャベス時代から独裁色は強かったが、政治経験の乏しいマドゥーロ時代となってからは、政敵排除のためにそれがヒートアップ。
野党抜きで行った選挙で再選を果たしたものの、野党陣営はそれを認めていない。
 
 
グアイドーは、公正な選挙が行われた時代に国会議長に選出された人物で、大統領が不在の場合は議長が暫定でその職を務めるという法的根拠により、暫定大統領を名乗っている。
つまり現在のベネズエラでは、マドゥーロとグアイドーの二人が自分こそ大統領だと主張しているのだ。
 
 
産油国のベネズエラながら、原油価格の下落やアメリカの制裁で経済は破綻。
インフレ率は100万%を超え、食品はもちろん、トイレットペーパーなどの日用品も入手困難で、医薬品不足から麻疹などの病気も蔓延している。
国外脱出者はこの1年で230万人、2015年からだと400万人を超えるといわれている。
 
 
アルゼンチンにも多くのベネズエラ人が逃げてきている。
最近、道を知らないタクシー運転手が多いと思ったが、彼らはベネズエラ人なのだそうだ。
ホルヘの知り合いにピザレストランのエリアマネージャーがいて、彼女が統括する4店舗にも合わせて5名のベネズエラ人がいるという。
そしてその5人は、母国では医者や弁護士というエリートだったそうだ。
アルゼンチンまで逃げてこられる人は、基本的に金持ちなのだ。
資産がない庶民は、陸路で隣国のコロンビアやブラジルへ逃れるしかない。
 
 
同じ南米であり、脱出者が国内に多いということで、ベネズエラの準クーデターはアルゼンチンで非常に注目されている。
ニュースチャンネルTNは人気キャスターを送り込んで連日現地から報道している。
それによると、レストランでの食事は約20ドルで、現地通貨では20万ボリバル・ソベラーノ。
ちなみにこの通貨は昨年8月に誕生したもの。
ハイパーインフレに対抗するため、それまでの通過ボリバルの5桁を切り捨てるデノミを行い、10万ボリバルが1ボリバル・ソベラーノとなった。
しかしそれでも、レストランでの支払いにはレンガ2個ほどの厚さの札束が必要だった。
 
 
年金受給額は月に約3ドルだという。
これでは不満が爆発しないほうがおかしい。
反マドゥーロのリーダーでありカリスマは、ロペスという元野党党首。
ものすごい名家の出身でハンサム。
まだ48歳と若い。
14年に反マドゥーロデモを扇動したとして禁固14年に処せられ、4年弱を軍刑務所で服役したのち、自宅軟禁に切り替えられていた。
グアイドーは暫定大統領の権限で彼を赦免した。
こうしてカリスマと軍幹部を後ろ盾にマドゥーロ退陣の挙に出たが、マドゥーロ派も強固。
軍の大部分はいまだに掌握しており、反旗を翻した軍幹部はブラジルやスペインの大使館へ逃げ込んだ。
 
 
それでも国民の「打倒マドゥーロ」の意志は固く、連日各地で大規模なデモが行われている。
特に首都のカラカスは緊迫しており、デモ隊と軍や警察がしばしば衝突して5名が死亡している。
 
 
グアイドーは、「マドゥーロ退陣まで続けよう」と呼びかけており、混乱はいつ収まるかまったくわからない。
そんな中、CONMEBOLがとんでもない発表をした。
「コパ・リベルタドーレスのエストゥディアンテス・デ・メリダ対アルヘンティノス・ジュニオールスの試合は5月8日にメリダで行う」というもの。
エストゥディアンテスはベネズエラのチームで、そこのホームで8日に試合しろというのだ。
 
 
実は、アルヘンティノスは30日にこの試合のためベネズエラへ行ったが、騒乱に巻き込まれ緊急帰国していた。
延期となった試合については、「ベネズエラでは安全が保障できない。試合はするが、他の国でだ」とコメントしていた。
しかしCONMEBOLはこれを却下。
「決定には従うが、何かあったらCONMEBOLのせいだ」と不快感を示している。
 
 
アルヘンティノスはマラドーナを輩出したクラブとして知られているが、他にもリケルメ、ソリン、レドンドらの有名無名を合わせ多くのプロ選手がここで育てられた。
クラブは小規模で人気も低いが、選手育成を飯の種にしているのだ。
10年ほど前は、その当時に世界中の1部リーグに所属しているアルヘンティノス出身者を集めれば4チームできるといわれていた。
たしかGKは4人いなかったが、全部で44人はいた。
 
 
ヨーロッパでは、育成で有名なのはアヤックス。
半月ほど前、アヤックスがツイッターで、「1982年からこれまで1750試合、アカデミー(ユース)出身者が最低1名スタメンに入っている」とその実績を投稿した。
 
 
これに対抗すべくアルヘンティノスファンがすぐ調べたところ、同クラブは1979年7月22日からこれまで、1666試合に少なくとも1名のユース出身者がスタメンだったことが判明。
年間の総試合が欧州より少ないので試合数では劣るが、年数ではアルヘンティノスがアヤックスを上回り、おそらく世界一だろうと自慢している。
 


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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