いよいよコパ・アメリカが開幕。
今回は日本代表が出場するので、日本から多くの報道陣がやってくるためホルヘはお休み。
分をわきまえて、大手メディアと張り合う気はサラサラない。
そして日本代表にも、間違ってベスト4以上になどならないことを期待している。
 
 
南米の強豪がしのぎを削る大会で、ほんの30年ほど前から本格的にサッカーを始めたような国の、しかも若手チームが好成績を残すのは正しい姿ではない。
奇跡や幸運、偶然が重なれば勝ち上がることもあり得るが、そんなことになれば、選手やサポーターが勘違いして今後の成長に悪影響を与えてしまう。
ここは実力通りグループリーグ敗退、最悪でもトーナメント1回戦で引き揚げてほしい。
 
 
ここで得るべきは、結果よりも将来の糧だ。
コパ・アメリカに出場するという貴重な体験を、東京五輪やその先の日本サッカーにつなげてもらいたい。
 
 
南米の選手は、とにかく身体の使い方がうまい。
日本の選手もボールテクニックは巧みだが、相手と競り合う状況になるとそのレベルが著しく下がる。
競り合いながらでもコントロールに優れることを「球際に強い」と一般的にいうが、正しくは「人際に強い」なのではないかと思う。
 
 
ボールと相手選手を同時に処理しなければならないとき、二つのうちのどちらを優先するか。
おそらく日本人はボールのほうに気を取られがちになるが、南米の選手は、まず相手のことを考える。
相手さえ制してしまえば、ボールのことはどうにでもなるのだ。
 
 
そこでボディコンタクトが生じるわけだが、それも単なるブロックやチャージに止まらない。
押し相撲のように、相手が押して来たらそれを利用して受け流すなど多種多彩。
相手を制するには、少しでもバランスを崩させればいいのだ。
日本の選手には、こうした技術をぜひ学んでもらいたい。
 
 
初戦の相手チリのルエダ監督は、5日も前に日本戦のスタメンを発表した。
南米では前日にメンバー発表というのは普通にあることだが、5日前というのは異例だ。
チリの懸念は、エースであるサンチェスのコンディションだった。
右足首の負傷の回復が長引き、ほんの数日前までは、「彼の起用は第2戦からというのが現実的」とチーム関係者が語っていた。
しかし11日に行われたアマチュアチームとの練習試合にサンチェスが出場し、高いレベルで40分プレーできたことで、監督は初戦からの起用を決めた。
まさか格下の日本相手にブラフをかますこともないはずで、つい嬉しくなって12日の会見でしゃべりすぎてしまったのだろう。
 
 
ウルグアイは2010年南アW杯で3位となり、翌年のコパ・アメリカでは優勝。
FIFAランキングも2位まで上昇した。
そうしたことで、最近のウルグアイ国民は、「ウルグアイはサッカー強豪国だ」との意識が強い。
そんな中、昨年行ったアジアツアーで代表は韓国と日本に連敗。
たとえ協会の資金稼ぎの親善試合とはいえ、これがウルグアイ国民のプライドを傷つけた。
したがって代表はこの場を借りて、日本をボコボコにしなければならないのだ。
 
 
FIFAの出場停止処分と負傷で前回と前々回大会欠場のスアレスが、今回はその鬱憤を晴らすべく気合十分で出番を待っている。
負傷明けではあるものの、直近のテストマッチ(パナマ戦)では63分から出場して1ゴールを決めている。
スアレスは得点後のパフォーマンスで親指、人差し指、中指の3本を立てて喜びを表す。
この指は、それぞれ3人の子供を表しており、「このゴールを子供たちに捧げる」というメッセージだ。
ゴールを量産し続ける彼は、まさかいちいちこのポーズをするのに疲れたわけではあるまいが、左首に3本指のタトゥーを入れてしまった。
日本戦でも、彼の子供たちを喜ばせることができるだろうか。
 
 
日本代表3戦目の相手はエクアドル。
普通に考えれば、この時点で日本の勝ち点は0か1。
チリとウルグアイが連勝していれば、これは消化試合となってしまう。
エクアドルはこのグループの南米3か国の中では最も格下ながら、初戦から2連敗する可能性は低そうだ。
勝ち点1か2を挙げていれば、彼らにはまだ生き残りのチャンスがある。
エクアドルファンのホルヘとしては、是非ともがんばってもらいたい。
 
 
エクアドルの監督はコロンビア人のゴメス。
02年の日韓大会に、悲願のW杯初出場へと導いた功労者。
W杯予選中には、暴漢にピストルで撃たれ重傷を負いながらも、エクアドルの地を離れることなく任務を全うした。
ホームの試合では、早くから詰めかけてくれたサポーターのために、一人でピッチに登場してサルサを踊ったりもする。
雑誌のインタビューでは、顔全体を黄色・青・赤の国旗カラーにペイントするなどサービス精神も満点。
4大会連続でW杯に出場するも前回のロシア大会は予選敗退だったエクアドルは、このカリスマ監督の下で復活を目指している。
 
 
これら3か国の詳細はスポルティーバWEB版にも掲載予定なので、そちらもどうぞ。
 


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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