新ルール ホルヘ三村 2019年7月13日 アルゼンチン, ブラジル, ホルヘ・ミム〜ラ ブラジルの優勝で幕を閉じたコパ・アメリカ。 準決勝でそのブラジルに敗れたアルゼンチンのメッシは、母国メディアのインタビューで、「不正だらけ。この大会はブラジルが勝つように仕組まれている」とCONMEBOLを痛烈に批判。 しかしこれが問題視され、最長で2年間の出場停止処分が下されるのではないかと心配されている。 それはさておき、今大会は新ルールが適用されたので、その主な改正点を記してみる。 ①キックオフ これまでは、試合前に主審が行うコイントスに勝ったチームがエンドを選び、負けたチームがキックオフを行っていたが、新ルールでは、勝ったチームがエンドかキックオフを選択できるようになった。 これは以前のルールに戻っただけ。 本来、キックオフとエンドのどちらが重要かといえば、それはエンドだった。 強風下や朝夕の試合では、風向き及び日差しがプレーに影響を与える。 エンドが有利なチームに先制点の可能性が高くなる。 したがって“勝ちチーム”に陣地を選ぶ権利を与えるようになった。 しかし昨今、キックオフからの直接シュートが認められるなど、キックオフからのメリットが増えたため、“勝ちチーム”はそれを選ぶこともできるようになった。 ②ゴールキック及びペナルティエリア内での守備側のフリーキック ゴールキック及びペナルティエリア内での守備側のFKはペナルティエリア外へ出なければインプレーとならなかったが、その必要はなくなった。 キックされたボールが明らかに動けば、その時点でインプレーとなる。 ただし相手選手は、ボールから9.15メートル離れていなければならない。 これは副審にとってありがたい。 これまではゴールキックの時、副審はペナルティエリアの横のライン上に位置するのが原則だった。 そこで、ボールがエリアを出たが出ないかをチェックするためだ。 しかしそこにいるとオフサイドラインを真横から見られない。 ゴールキックを相手選手がヘディングで弾き返しそのボールがFWに渡ってのオフサイドというのはありがちで、改正により副審はそのジャッジがしやすくなった。 ③ドロップボール ドロップボールは、一人の選手を対象に行うこととなった。 ペナルティエリア内ではゴールキーパー、エリア外の場合は、最後にボールに触れていた選手に対して主審がボールをドロップする。 反則などがないのに、主審が笛を吹いてプレーを止めた場合の再開方法がドロップボール。 主審がピッチに落としたボールをプレーすることで再開となる。 これは、本来はボールの奪い合いだった。 両チームの選手が間に落ちたボールを自チームのものにしようと争う、バスケットのジャンプボールのようなものだった。 しかし近年はだいぶ様子が変わってきた。 主審がプレーを止めるのは、負傷者が出た場合が多い。 そして主審がドロップボールを負傷者のチームに行い、それを受けた選手が相手チームにボールをプレゼントするのが恒例となった。 しかし中にはフェアプレーとは程遠く、相手チームの不利となるようなラインから蹴りだしたり、相手チームに渡さずそのままプレーするケースもある。 そこで、時間のかかるフェアプレーごっこを排除し選手も観客もわかりやすいよう、決められた選手がドロップボールを受け、相手に渡す慣習も改めて普通にプレーをすることとなった。 この際、他の選手はその場から4メートル離れなければならない。 ④審判員が石でなくなった 審判員にボールが当たり、その結果得点および決定機につながる、またはボール保持チームが変わってしまった場合は、ドロップボールで再開する。 これまで審判員は石ころと考えられ、彼らに当たってボールのコースが変わっても不可抗力とされていた。 しかしそれにより片方のチームが著しい不利を被ることもあるので、それを是正するために改正した。 ⑤フリーキックのカベ フリーキックの際に守備側が3人以上でカベを作った場合、攻撃側の選手はそこから1メートル以上離れなければならない。 カベの間を通すフリーキック狙いや、ゴールキーパーにボールを見せないための目隠しとして、攻撃側の選手がカベの中に割り込むことがあった。 しかしそこで押し合いへし合いが多発し、そのたびに主審が注意して時間がかかっていた。 時間短縮ともめ事回避のため、この改正が行われた。 ⑥ハンドの反則 ハンドの定義が明確化された。 ハンドの反則は「手や腕を用いて意図的にボールに触れる」ことだが、これまでも、意図的ではなくボールが偶発的に手や腕に当たればハンドとされることが多々あった。 今回の改訂では、意図的ではなくともハンドとなるのはどのようなケースかを明確化した。 ・偶発的でも、手や腕で得点する、または得点機を作る。 ・不自然に体を大きくするように広げた手や腕にボールが当たる。 ・肩より高い位置の手や腕にボールが当たる。 その一方、自分や至近距離にいる選手(相手、味方を問わず)の体から跳ねたボールが手や腕に当たっても、それは避けられないこととして反則にはならない。 (*コパ・アメリカでは、このケースでもハンドになったケースがあった) また、スライディングの際に地面に突いた手や腕がボールに触れてもハンドではない。 ⑦選手交替 選手交替によってピッチから退場する際は、最も近いタッチライン、ゴールラインから出なければならない。 これまでの、「タッチラインの中央付近」から「最も近い境界線」に変わった。 これはもちろん、交代の際の時間稼ぎを防ぐため。 ただし、何らかの場合で主審が退場地点を指定した場合はそれに従う。 グラウンドによっては、ゴール裏を通り抜けられない場合もある。 ⑧ペナルティキック ゴールキーパーはペナルティキックが蹴られるとき、少なくとも片足をゴールライン上かライン上方に置いておかねばならない。 これまでの、「ゴールライン上に位置する」から「少なくとも片足」に改正された。 つまりもう片足は前に出ていてもいいということ。 しかも片足は、ラインを踏んでいなくとも、ラインの上方にあればいい。 しかしライン上もしくは上方に片足がないと、警告の対象となる。 ⑨ペナルティキッカー ペナルティキックを蹴る選手が負傷してスタッフの治療を受けたとしても、一度フィールドから出る必要はなく、治療後にキックを行うことができる。 通常、治療を受けた選手はフィールドから出なければンらないが、反則を受けたチームが不利益を被らないよう、PKキッカーは例外とした。 ⑩ベンチスタッフへの処分 監督などのベンチスタッフにも、口頭での注意、警告、退場の処分が下せるようになった。 これまでもスタッフの退席というのはあったが、それは正式には主審が命じたものではない。 これまでのルールでは、主審にその権限はなかった。 暴言などを繰り返すスタッフに対し、「あなたがいると、これ以上試合の進行はできない」、つまり「退席しないと試合は続行しない」との意思を示すのみ。 試合を打ち切られて困るのは主催者なので、主催者がスタッフに退席を求めたり命じていた。 それが改正により主審の権限となった。 ベンチから暴言が飛び、それを発した者が特定できない場合は、最上位のスタッフ(通常は監督)に処分が下される。 Tweet