5月1日時点、新型コロナの感染者が日本(14,516名)の3分の1強の4,519名で、死者は日本(466名)のおよそ半分の225名のアルゼンチンは、今シーズンのスーペルリーガと下部リーグの打ち切りを決めた。
スーペルリーガは開幕の第1節は行ったものの、その後は無期限中断となり、最終的にこの決定となった。
 
 
パンデミック宣言後に素早く外出禁止令を出したフェルナンデス大統領は、「この措置の目的は時間稼ぎだ。今、国内でコロナが蔓延したら手の施しようがない。他人と接触しないよう家にこもって感染者数の増加をできるだけ遅らせ、その間に医療体制を整える」と国民に訴え、法令を破って遊びに出る者に対しては、「この理屈がわからない奴はマヌケだ」と強い口調で非難した。
とにかく意図が明確で理論は単純。
国民にもわかりやすい。
コロナは防げないもので、国内でも蔓延するという前提に立っている。
外出禁止令は3回延長され、現在は5月10日までとなっている。
先日、電話で話したアルゼンチン人は、「解禁になった後が怖い。感染が爆発的に広がるのではないか」と危惧していた。
そして感染者増大に備え、サッカークラブは体育館や施設内にベッドを設置して臨時病院化している。
この状況では、とてもリーグ再開の目途は立たない。
 
 
その一方で感染者数が世界ランキング10位の92,109名となり死者は6,410名と南米最悪のブラジルは、厚生大臣が「リーグを再開することが望ましい」と公式に述べた。
ボルソナロ大統領は経済重視の立場で、人の動きを制限することに反対している。
しかしサンパウロ州知事は商業施設を閉鎖するなど、国内での足並みが揃っていない。
厚生大臣は、選手だけでなくスタッフやクラブ職員、その家族らの安全が保たれる方法を徹底するという条件つきながら、国民が待ち望んでいるサッカーを早く復活させるのが望ましいと、サッカー連盟からの質問書に答えた。
大統領は「コロナを恐れすぎるな」とのアピールを繰り返しており、サッカーの再開についても、「選手のような若い人は、たとえ感染しても重篤になる可能性は限りなく少ない」と選手保護の考えはまるで持っていない。
ポルトアレグレ州では、名門のグレミオとインテルが、選手の間隔2メートル以上をキープしながらすでに練習を再開している。
 
 
感染者7,006名、死者314名のコロンビアもスポーツ大臣が8月か9月のリーグ再開を議会に諮ることを発表した。
すでに大統領や厚生大臣とも会談を重ねており、4週間にわたる安全テストを行うなどで合意は得られているようだ。
ただドゥケ大統領は、南米で第1号の再開国になることには難色を示している。
どこかが再開したら、その様子を見て、問題がなければ続こうという作戦。
しかし、再開への準備開始には乗り気となっている。
 
 
リーグの中断、または再開しても無観客ということになると、クラブは収入が激減またはストップしてしまう。
そして真っ先に直面するのが選手への支払いだ。
アルゼンチンではラシン、アルヘンティノス、ベレスなどが減額で全選手と合意。
ベレスの会長は、「ある選手は、俺には払わなくてもいいよ、といってくれた」と交渉がスムーズだったことを語ったが、これは珍しいケース。
選手によってクラブへの愛着や懐具合が異なる。
ユースからのクラブ育ちと移籍してきたばかりの新加入選手では温度差があって当然だ。
ボリビアでは1部リーグに所属する14クラブ中、6名の会長がこの問題で辞任しそうだという。
ペルーでは、再開したら再雇用を条件に、全選手とスタッフとの契約解除という荒業を使ったクラブもある。
しかし選手会の強い国は、その意見をクラブが無視できず、ドロ沼に陥ることもある。
給与問題で真っ先に声を上げた選手会はエクアドルだった。
会長は元代表のイバン・ウルタード。
選手会としては減額を受け入れられないという厳しい意志を示した。
これを皮切りに選手は減額反対という流れができたが、元アルゼンチン代表で現在はボカ所属のテベスが、「サッカー選手は1年無収入でも生きていける」と、減額を受け入れるべきとの立場でコメントした。
彼はアパッチ砦と呼ばれる貧しい犯罪多発地区からサッカーで成功した人物として人気が高く、多くの選手のあこがれの的だ。
2016年には8千万ドルという最高金額で中国の上海へ移籍した。
 
 
ところが、このコメントでテベスは各国の選手から袋叩きとなった。
「1年無収入で大丈夫だって?それはお前みたいな一部の高給取りだけだ。下部リーグの選手は日々の暮らしに困っている」とか、上海ではケガでほとんど試合に出られなかったことを突いて、「給料泥棒が、何言ってる」など批判の嵐。
 
 
しかし、そんなテベスを救ったのは古巣コリンチャンスのサポーターたち。
彼は05,06年コリンチャンスでプレーし、ライバル国の選手ながらキャプテンも務めた。
リーグ中断により選手もサポーターも暇だが、マスコミも書くネタがなくて困っている。
そんな中、グロボ・エスポルチ紙が、「コリンチャンスの今世紀ベストイレブンは誰だ」という企画を作りサポーターに投票を呼び掛けた。
この結果、テベスはベストイレブンに選ばれただけではなく、全選手中3位となる32,049票を獲得。
ちなみに1位は4万票超えのロナウドで、この二人でベストイレブンの2トップが構成された。
古巣サポーターのこの高評価が、失意のテベスに元気を与えた。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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