前々回、「ペルーの妙案」で、ペルーリーグは移動による感染拡大を防ぐため、全チームを一か所に集めるセントラル方式での再開を検討していることを紹介した。
6月8日にそれが正式に決定し、7月31日からリマを開催地として行うこととなった。
本来なら隔離された田舎町のほうがいいのだろうが、全チーム用の宿泊施設、練習場、複数の試合会場という条件をクリアできるのは大都会しかない。
 
 
この発表後、アメリカのMLSも7月8日からの再開を決定。
同じくセントラル方式だが、場所はフロリダのディズニーリゾート内にあるESPNスポーツコンプレックス。
スポーツイベントや合宿向けの施設なのでホテルは充実しているし、サッカーやホッケー、ラクロス対応のグラウンドが17面もある。
スタンド完備のメインスタジアムもあるが、ここで全試合を行うとピッチがもたないだろう。
しかし無観客なので、17面のうちのいくつかを試合用にすることも可能だ。
リーグ期間中ここに閉じ込められてしまう選手は可哀そうだが、コロナ対策と再開を両立するには最適の場所といえるだろう。
 
 
南米では他にも、パラグアイ、ウルグアイ、チリがリーグ再開日を決めている。
感染者と死者拡大中のブラジルとエクアドルは、チーム練習が解禁(ブラジルは州による)となった。
いまだ自粛中の4か国のうち、9月からミニ大会の開催を目指すアルゼンチンは、同国北部のサルタやフフイでのセントラル方式を検討している。
 
 
3月20日からロックアウトを始めながら、感染者は5月に入ってから爆発的に拡大。
5月8日に1日の感染者数が初の200人超えとなり、その後は100人単位で増え続け、6月12日には24時間で1391人の感染が確認された。
このうちの1309人が首都圏で、サルタやフフイはゼロ。
州知事も大会の招致に意欲を示しているが、首都圏から移動する選手が新たにウィルスを持ち込むのでは、との懸念もある。
 
 
さて、先ごろDOC FCなるビデオを見つけた。
ラテンアメリカのストリートサッカーや草サッカーを題材としたショートドキュメンタリー。
今のところCAPITULO(章)1,2,3があり、1がメキシコ、2がコロンビアで3はブラジル。
メキシコ編では旨そうなファストフードの映像から始まり、街の風景などを経てさまざまなミニサッカーを映す。
舞台は大都会のメキシコシティーなので、実際には道路ではなく公園などのミニコートでのプレー。
その合間にサッカー愛を語る人々のコメントが入る。
そして最後は、事故で片脚を失った青年が、信号待ちをしている車列の前で、松葉づえを使いながらリフティングを披露するシーン。
すべての人に、それぞれのサッカーがあることを伝えている。

 
 
コロンビア編はボゴタから。
サルサなどのダンスが好きなお国柄で、サッカーにもその影響が表れていると映像で説明。
また皆、賭け事が好きで、少年までがお金やジュースなどを賭けてサッカーをしていると語っている。
そして、過酷な環境でプロを目指す17歳の少年が、いつかビッグクラブに入ることを夢見て努力している姿を伝えている。

 
 
ブラジル編はリオデジャネイロが舞台。
ビーチサッカーに限らず、コンクリートの上でも裸足でプレーしている。
映像を見るだけで、ブラジル人のサッカー好きが伝わってくる。
その一方で、ファベーラ(スラム街)に住む少年の、「家族のためにサッカー選手になりたい。ここ(ファベーラ)はひどいところで、悪い人や泥棒ばかり。サッカー選手にならなければ、刑務所行きか死ぬかのどっちかだ」という、厳しい現実を表すコメントもある。

 
 
言葉がわからなくても、ラテンアメリカのそれぞれの国の雰囲気やサッカーの違いが楽しめる。
今後はアルゼンチン編などもアップされるようなので、チェックしてみてはいかがだろうか。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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