願い空しく、後藤さんは帰らぬ人となった。ご冥福をお祈りする。
 
 
 
そしてその2日後、次元は全く異なるものの、日本サッカー界にも激震が走った。
 
アギーレ監督の解任だ。
 
アジアカップではベスト8敗退と期待を大きく裏切ったが、ホルヘは彼の手腕を評価していた。
 
グループリーグ最大のライバルとされたイラク戦では完全に主導権を握り、
 
以前のブログ「ヨルダン強いぞ」でホルヘが要注意チームとしたヨルダン相手にも格の違いを示した。
 
武藤、柴崎と投入した選手がアシストとゴールを決めたように、ベンチワークも成功している。
 
決定力不足は深刻ながら、「監督の仕事は、シュートを打たせるまで」という言葉もあるように、
 
そこから先で得点になるかならないかは選手の責任が大きい。
 
UAE相手には35本もシュートを放っているのだから、監督の務めは十二分に果たしている。
 
 
 
したがってアギーレがそのまま続けて戦術とコンビネーションをより浸透させ、
 
フィニッシュのパターンを重点的にトレーニングすれば、かなりのレベルまで行けることは間違いなかった。
 
ネックとなる八百長問題も、アギーレで行けるところまで行き、裁判でいざ黒となれば、
 
コーチを昇格させてアギーレイズムを継承させればいいと思った。
 
しかし残念ながら、協会は仕切り直しを選んだ。
 
 
 
今後の焦点は後任選びだが、気になったのは一部報道で、候補者としてオリヴェイラ(前鹿島)、
 
クルピ(前C大阪)らの名前が挙がっていることだ。
 
いずれもブラジル人。今の日本代表に、ブラジル人監督はいかがなものか。
 
 
 
以前ジーコが代表監督になったとき、ホルヘはナイスな人選だと思った。
 
トルシエの下、韓日W杯でベスト16となったことで、
 
「日本は強くなった、トップレベルまであとわずか」という風潮になった。
 
代表選手の何人かも、そのように思っていたはずだ。
 
しかし戦術や組織よりも個人の能力をベースにするジーコにより、浮かれた夢は壊され現実に引き戻された。
 
ホルヘがジーコに望んだのは、これだった。
 
世界トップとの差はまだまだ大きいということを、証明してもらいたかったのだ。
 
ミスコンに例えるなら、化粧や整形、エステを駆使すれば世界大会でそこそこまで行けるが、
 
スッピンやナチュラルボディでは太刀打ちできないのが日本のレベルだ。
 
 
 
ブラジル人すべてとはいわないが、彼らの多くが選手個々の能力をベースにチームを作る。
 
いい形でボールを受けたら、相手と勝負して突破するのが基本。
 
成功率が6~7割でも、パスをつないで時間をかけるより効果的と考える。
 
ブラジルの攻撃型選手は、第一に突破を狙う。
 
それが無理、あるいは他の方法がベターだと思えば、パスに切り替える。
 
日本のようにパスありきのパスではないので、相手の虚を突くことが多い。
 
そしてこの突破かパスかを判断する正確さと早さが、一流選手とそれ以下の差となる。
 
ブラジルの1部リーグでプレーする選手なら、誰でも高い突破力をもっている。
 
国内で終わるかヨーロッパへ行けるかはこの差による。
 
 
 
ブラジル流は、攻撃型の選手にタレントが揃ったときは好成績をあげる。
 
日本も、この方法でアジアでは通用するだろう。
 
しかし、そのまま本大会へ行ったらどうなる?
 
ブラジル人監督のレベルが低いといっているのではない。
 
彼らは選手の能力を活かすという点では優れている。
 
しかし世界トップと日本では、選手の能力にまだ差があるのだ。
 
 
 
今や日本は、アジア内では横綱相撲で勝つことが義務付けられている。
 
韓国やオーストラリア相手にも、消極策ではなく、ガップリ四つの正攻法で戦うことが望まれる。
 
しかしブラジルW杯の結果を見るまでもなく、本大会の相手は格上ばかりで、まともに行けば痛い目に会う。
 
となればカウンター重視で戦わなければならないのだが、ブラジル人監督にそれを期待するのは危険だ。
 
 
 
だからホルヘとしては、後任監督は戦術に長けた人物の方がいいと思う。
 
巧みなメーキャップで、日本を変身させてくれるようなタイプだ。
 
また奇策として、アジア予選はブラジル人に任せ、本大会出場を決めたら監督交代という方法もあると思う。
 
アジア予選と本大会では完全に戦い方が変わるのだから、監督とチームを刷新するのも理にかなっている。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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