22日に行われた日本代表とのテストマッチに出場したコロンビア代表のGKバルガスは、デポルティーボ・カリに所属している。
カリには名門アメリカ・デ・カリもあり、この両者の対決がカリ・クラシコ。
17日に行われたこの一戦は、オウンゴールによりアウェイのアメリカが勝利を飾った。
 
 
日本戦に召集されていたバルガスは、試合後にカリから首都のボゴタへ移動するのだが、普通の手段では飛行機の時間に間に合わない。
D・カリのスタジアムは市街地にあり、試合後は観客が乗ってきた車で大渋滞となってしまう。
 
 
となるとバイク移動という方法が考えられるが、それでも自動車の運転手が通路を作ってくれなければスイスイとは進めない。
そこで採用されたのが警察のバイクに乗ること。
これなら緊急車両なので優先走行ができる。
バルガス自身もバイク警官の制服をまとい、後部シートにまたがってスタジアムを出発し予定の便に搭乗できた。
日本戦では好セーブで勝利に貢献。
彼を乗せた警官も喜んでいることだろう。
 
 
カリ・クラシコに勝ったアメリカについては、以前、「コロンビア内外」でエンブレム問題について書いた。
エンブレムからシンボルの悪魔を外したことでサポーターが怒っているというものだ。
これはクラブとサポーター間の問題だが、最近クラブのシンボルに関するもっとスケールの大きな話が巻き起こった。
 
 
スペインのバレンシアが100周年を記念してデザインしたエンブレムおよびその他のシンボルマークに対し、アメリカの映画会社ワーナーと子会社のDCコミックスが使用禁止の訴えを起こした。
その理由は、「バットマン」のものに似ているから。
 
 
映画やアニメの会社はキャラクターグッズなどでの利益を守るため、さまざまなデザインを商標登録している。
ワーナーもバットマン絡みで、さまざまなデザインのコウモリを登録している。
そして、バレンシアのシンボルがコウモリ。
そのデザインは、どうしてもワーナーが登録したものの中のどれかに似てしまう。
つまり、類似商標だというのがワーナーの主張。
 
 
しかしバレンシアは、そのデザインを使わないことや変更する気はないと全面拒否している。
そもそもバレンシアがなぜコウモリをエンブレムに入れているかといえば、それがバレンシア市の紋章に入っているから。
つまり、市のシンボルなのだ。
しかもエンブレムにコウモリを入れたのは、バットマンが生まれる前のこと。
街を愛する人々が由緒ある紋章から取り入れたシンボルに対し、後発の商業主義者が口を挟むなという思いだろう。
 
 
それぞれが正当性を主張する両者は、以前にもこの件で衝突したことがある。
2014年、バットマン誕生75周年のことだった。
2014年が75周年ということは、今年は80周年。
バレンシアとともに節目の年だ。
となれば、これを機に敵対関係を払しょくして逆に友好関係を築いたらどうだろうか。
ワーナーがバレンシアとスポンサー契約を結び、コウモリの商標問題は棚上げして使用を黙認。
バレンシアは積極的にコウモリを利用し、あるいはバットマンとコラボしてキャラクターグッズの売り上げに貢献する。
ワーナーの持ち出しが多くWIN WINとはならなくとも、大人の対応ということで企業イメージは上がるはずだ。
 


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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